7月7日。神宮球場の夜空を見上げた。残念ながら星は見えず「織姫と彦星さまは出会えなかったのか」なんてちょっぴりセンチメンタルになった。曇天だった空も試合終了後には雲がとれていたが、TORACOに彦星は見えなかった。

 そもそも七夕とは、広辞苑にはこのように記載されている。【天の川の両岸にある牽牛星と織女星とが年に一度相会するという、7月7日の夜、星を祭る年中行事。中国伝来の乞巧奠の風習と日本の神を待つ「たなばたつめ」の信仰とが習合したものであろう。奈良時代から行われ、江戸時代には民間にも広がった。庭前に供物をし、葉竹を立て、五色の短冊に歌や字を書いて飾りつけ、書道や裁縫の上達を祈る】。書道や裁縫の上達を願っている人は現代どのくらいいるのだろうかと思うが、近年は駅などにも笹と短冊が用意されるなど当たり前の行事となっている。今年は「マスクなしの生活が戻りますように」という短冊を多く見かけるが、織姫と彦星というパワーワードを持つ七夕というイベントは“誰かを想う気持ち”を思い出させてくれる。

 2021年の阪神ファンは例年以上に“本気で”「阪神優勝!」と短冊に認めたのではないだろうか。6月18日時点で2位巨人に最大8ゲームの差をつけ、関西のスポーツ紙や情報番組では「あかん!阪神優勝してまう!」という見出しが躍っていた。「信じていいかな? 今年は大丈夫やろ!」。2008年に13ゲーム差をひっくり返された悲劇が脳裏をよぎりながらも、どこか確信したい気持ちを虎党は抱いていたはずだ。しかし、文字通りの束の間。7月2日には1.5ゲーム差に迫られ、翌日敗戦すると「-0.5ゲーム差」で首位陥落という状況になった。そこからは勝ち頭・青柳の快投や大山の劇的本塁打などでヤクルト戦を勝ち越し、首位を譲らずにオールスター前最後の巨人戦を迎えることができた。

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明らかに去年までと違う試合中の「選手談話」

 開幕してしばらく経ったころから気になることがあった。それが、試合中の「選手談話」だ。前の打席で本塁打を放った選手に打順が回るとテレビやラジオのリポーターが「先ほどのホームラン、打ったのはスライダー……」とコメントを入れているもの。今シーズンはそのコメントが明らかに去年までと違うと感じる。

 具体的な例を挙げよう。まずは、7月3日に本塁打を放ったマルテのコメントを紹介する。「打ったのはストレート。イトウが良い投球を続けてくれているし、追加点が欲しかったところでホームランという最高の結果になったね。タイガースネックレスも掛けてもらえて気分も最高だよ」。同日に同じく本塁打を放ったサンズはこう振り返っている。「打ったのはストレート。(伊藤)将司が粘りの投球を続けてくれていたし、(梅野)リュウが先頭でいい仕事をしてくれたからとにかくランナーを返したかったよ。自分の仕事ができてよかったね」。

 さらに、7月6日の梅野の犠牲フライのコメントはこうだ。「打ったのはストレート。みんなが良い形で繋いでくれました。テル(佐藤)もランナーを返してくれていたので、自分もランナーを返すという気持ちで打席に入りました」。七夕の夜に登板した藤浪は「ツーアウトからバタバタしてしまった中で、サンズの守備に助けられました。サンズ様様ですし、大いに感謝したいです」と残した。