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荒木雅博コーチと二人三脚で高みを目指すドラゴンズ・高松渡の“走塁こそ自分の生きる道”

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/07/11

 3月26日に始まった2021年シーズンですが、早いものでもう半分以上の試合数を戦いました。

 今回はプロ入り4年目で初の開幕一軍入りを果たし、チームトップの12盗塁を記録するなど(7月10日時点)、足のスペシャリストとして貴重な戦力になっている高松渡のことをお伝えしようと思います。

 高松は、野球選手としては体の線がかなり細いのですが、とにかく足が速いです。ウォーミングアップ後に行う瞬発力の測定では、現在の一軍メンバーの中では常にトップ。約20年間ドラゴンズに在籍している塚本洋ストレングス、コンディション担当に聞いても、単純に走るだけなら、これまで見た選手の中で一番速いかもしれないとのことです。

 また、高松の走りは力感が全然ないのが特徴です。走っている姿と進み方のギャップは、まるで動く歩道の上を走っているように感じます。そして体重がない分、ベースを回るスピードも遠心力がかからないため、勢いよくベースを回っても体が外に持っていかれず、スムーズに回ることができます。

 食事もかなり偏食で、なかなか量を食べることができずに、入団してから特に夏場にかけてとても苦労していました。今は自分の好きなものだけでもとにかく量を食べるようにして、夏場も乗り切れるようにしています。

 少し話はそれますが、高松はお菓子が大好きで、ロッカーにはいつもチューイングキャンディが置いてあります。寮では石橋康太らの後輩が高松の部屋に来ればお菓子が何でもあると思っているみたいで、「何かお菓子ないですか」とよく訪れてくるそうです。

高松渡 ©小林正人/中日ドラゴンズ

荒木コーチが教える、走塁の技術を上げるために大切なこと

 これまでのシーズンを高松に振り返ってもらいました。

「初めて開幕1軍に入ったものの、昨年までは全然1軍の試合に出ていなかったので不安や心配しかありませんでしたが、開幕戦の大事な場面で盗塁を決めることができて自信になりました。ただ、その後、けん制でアウトになったりして、塁に戻ることが頭に入ってきてしまい、徐々にスタートが悪くなってきています。もちろん、戻る意識はなくてはいけないのですが、今は戻ることが8でスタートが2ぐらいの割合になってしまっているので、これを7対3、6対4にしていかなくてはと思っています」

 高松の走塁を指導し、アドバイスを送っているのは、ドラゴンズ歴代1位の378盗塁の記録を持ち、数々の“神走塁”と呼ばれる走塁を決めてきた荒木雅博内野守備走塁コーチです。荒木コーチ自身も走塁と守備からレギュラーを取り、最終的には2000本安打も達成しました。荒木コーチはこう言います。

「もちろん打つことも守備も大事だけど、今は走塁で1軍にいられるわけだから、まずは走塁を極める気持ちで取り組んでほしい」

 走塁を極めるという気持ち、姿勢は、プロ野球選手として成長することすべてのことにつながってきます。何かをするということは、成功するにしても失敗するにしても、まずは「行動」を起こしているわけで、その行動を起こした後が大事になります。

「成功したとしても、『もっとこうした方が良かったかな?』とか、アウトになったとしても『良いスタートが切れたのに、なぜアウトになったんだろう?』とか、いろいろなことを考えてほしい。まずは“考える習慣”を走塁で身につけること。考えることっていうのは、打つこと、守ること、すべてにつながってくるからね」

 盗塁には技術が必要です。技術がないまま、ただスタートを切るだけでは、無謀な盗塁になってしまいます。「“根拠のない勇気”にならないようにしないとね」と荒木コーチは教えてくれました。走塁の技術を身につけるには、ユニフォームが真っ黒になるような練習に加えて、このように考えることがとても大切になるのです。