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対外的な情報収集の手段として位置づけられる

 与党の自民党・公明党は選挙公約にも宇宙開発の問題を明示しており、最も強い関心を示している。

 自民党は科学技術の分野でも宇宙航空、海洋・極域の研究開発の一環としてH3ロケットを位置づけ、宇宙利用の側面では準天頂衛星を活用したG空間情報による産業振興などを掲げ、またデータのオープン&フリー化を進めるなど、2017年に発表された「宇宙産業ビジョン2030」に基づく産業政策が列挙されている。また、安全保障分野でも「我が国の安全保障に資する宇宙利用」と書き込まれ、対外的な情報収集の手段として位置づけられているように見える。

種子島宇宙センターから打ち上げられるH2Bロケット ©共同通信社

 公明党も「わが国の町工場が持つ世界トップレベルの技術力が支える航空・宇宙や海洋等の研究開発を推進」と町工場レベルでの産業振興を謳い、情報収集・警戒監視、ミサイル防衛などの観点からの宇宙利用を進めることも書き込んでいる。

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 自民・公明両党は、与党として現在の政府が進める政策をそのまま公約に展開しているだけに、宇宙政策とそれに関連する産業振興や安全保障の分野では大きな変化は見られない。2008年の宇宙基本法の成立以降の宇宙政策が、結果として日本の宇宙産業の競争力をつけ、安全保障分野においても北朝鮮の核・ミサイル開発がミサイル防衛の必要性をより強く認識させ、それに資する宇宙システムの開発の必要性に対する認識を高めていることを考えると、これまでの政策を大きく変える必然性はないものと思われる。

 この中で読みにくいのは立憲民主党の宇宙政策である。同党の公約の中には宇宙開発についての目立った記述もなく、宇宙開発と関連する産業分野(サイバー、G空間など)に関する記述もない。立憲民主党の公約では安保法制に基づく憲法改正に反対し、北朝鮮の核・ミサイル開発も外交力を発揮することで解決するという立場を取っていることから、安全保障目的の宇宙利用は想定していないと考えられる。元々宇宙基本法を推進していた民主党出身の政治家が多数所属しているとはいえ、宇宙基本法推進の中核を担った宇宙基本法検討PTに属していた議員の大半は立憲民主党には所属していない。こうしたことからも、立憲民主党は共産党、社民党と同じような立場を取るのではないかと想定される。

JAXAの筑波宇宙センター運用管制室 ©文藝春秋

 このように、今回の選挙を宇宙政策という争点で見ると、安全保障と産業振興に重点を置き、宇宙基本法後の宇宙政策の継続の立場を取る自民・公明・希望の党に対し、宇宙開発を宇宙基本法成立以前の科学技術中心のものに戻そうとする社民・共産・立憲民主党という構図になると思われる。