「おまえが支えないからだ。妻として内助の功が足らないからだ」シングルマザーの小松めぐみさんが元夫から言われた言葉である。白人の両親のもとに生まれ、アメリカで教育を受けた元夫は、表面上はリベラルを自負していたが、うまくいかないことがあると小松さんに責任を押し付け、被害者モードになっていたという。
小松さんが子供を連れて、夫と別れるまでをノンフィクション作家・西牟田靖氏の『子どもを連れて、逃げました。』(晶文社)から一部抜粋して、紹介する。
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「男も育児をするべき」という気持ちだけはあった
―妊娠中に浮気の現場を発見し、警察を呼ばれた後、どうなったんですか?
臨床心理士のところへ二人で行って、カウンセリングを受けました。私と夫、それぞれ一人ずつ事情を話したんですが、元夫は「置物を全部なぎ倒したりして、家で暴れまくった。あいつはDV妻なんです」などと話したそう。もちろん私は否定しました。「物を壊したり暴力を振るったりしたことは一度もないです」と。警察官同様、すぐに察したようで、治療ターゲットは元夫になりました。すると彼は「僕、先生のこと大好きですよ」と、味方につけようと必死になっていましたね。
―出産は問題ありませんでしたか?
元夫には「外国人専用の病院で産め」って言われました。でも、そんなときまで格好をつける気はありません。まして私にとって英語は母国語じゃないし、金額だって無駄に高い。「普通の病院で産む」って宣言して、実際、そのようにしました。元夫は立ち会ってくれました。そういうわかりやすく感動的な部分は好きなので。涙? もちろん流していました。
―育児はしてくれたんですか?
アメリカの大学や大学院を出た元夫だけに、表面上はリベラルを自負しているんです。それで、「男も育児をするべき」という気持ちだけはあったみたい。おむつを替えたりとかミルクをあげたりとか、何かと甲斐甲斐しくやってくれましたよ。だけど、ちょっと大きくなっちゃうとだめ。子どもに自我が出てきて、自分のコントロールが利かなくなる。それが嫌だったみたい。だから、ちょっと大きくなったら、すごく突き放していて、厳しすぎると感じました。