少数民族「チン族」の女子も参加
この日はシャン族のほかにも少数民族女子チームが参加した。チン族のCYO(チン・ユース・オーガナイゼーション)だ。ゴールキーパーのドー・レイ・ジンさん(30)は、
「いちばん楽そうだからこのポジションにしました。今日はさぼってます(笑)」
と流暢な日本語で言う。外国語を勉強することが好きで、英語にも惹かれたが日本語を選んだ。現地で暮らしながら学びたいと日本に留学し、卒業後は人材関連の会社で働いている。チームメイトとわいわいはしゃぎながらも、その胸には黒い喪章がつけられていた。故郷のチン州でも、軍の虐殺が続く。被害者を悼むためだった。
「ご存知だと思うんですけど」
と丁寧に日本語で前置きをして、
「いまミャンマーはクーデター以降ずっとたいへんな状況です。それでも若い人たちががんばって活動していて。それを海外から応援したい。いま帰国はできないんですが、自分たちができることをやろうと思って参加しました」
そんなことをはきはきと言う。
彼女たち少数民族も、ミャンマーの中では多数派であるビルマ族も関係なく、みんなでひとつのボールを追う。
それでも素顔はいまどきの女の子だ。男子のほうは判定をめぐってエキサイトする場面があったりもしたが、女子はいたってのびやかな雰囲気で、試合の合間にはお弁当をパクパクしていたり、豊洲のタワマンを見上げて写真を撮ったり、普段は着ることもないだろうサッカーのユニフォーム姿でのコスプレ撮影会に興じたりと楽しそうだ。
支援してくれる日本人がずいぶん増えた
主催者のひとりティリ・ティサーさん(30)も、女子チーム「Revolution Tokyo Myanmar Beauty」をつくって参加した。
「フットサルなんてやりかたもわからなくて、練習中もあちこちぶつけて痛い目にあって。それでも、フットサルならみんなのモチベーションも上がるし、お金も集まりやすいかなって」
彼女たちのグループはふだんから精力的にデモ活動を行っている。街頭に出て軍に抗議をし、ときにデモ行進を行い、ミャンマーの現状を日本人にも訴える。活動を始めた当初は、日本でデモなんてやるな、ミャンマーに帰れと心ない声も殺到したが、それでも粘り強く続けていくうちに風向きが変わりつつあると感じている。
「支援してくれる日本人、ミャンマーに関心を持ってくれる日本人が本当に増えました。温かい手紙を送ってくれた日本人もいます」
そして日本政府には、軍ではなく、民主派がつくった「国民統一政府(NUG)」のほうを認めてもらいたいと訴える。
彼女たち参加者は「自分たちにできることをやりたい」と口々に言うのだ。これは彼女たちなりの、軍との戦いでもある。国のため、故郷の家族のために自分のできることを、という気持ちは、日本人も見習わなくてはならないと思わされた。