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「自分たちができることを」…ミャンマー人女子が日本でフットサル大会を開いた理由

「自分たちができることを」…ミャンマー人女子が日本でフットサル大会を開いた理由

ミャンマーは「世界2位の寄付大国」

2021/06/20
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ミャンマーは「世界2位の寄付大国」

 6月6日と13日に渡って行われたこの大会には、なんと45チームが参加。うち4つが女性チームだ。男女別で試合が行われた。主催者のひとりで強豪の男子チーム「ファイブスターFC」を率いるビー・ジェイム・アウンさん(38)も、

「まさかこれほど集まるとは。ちょっと感動しました」

 と喜ぶ。首都圏だけでなく、名古屋や大阪から遠征してきたチームもあるという。密にならないよう日程を分け、検温や消毒を行い、試合中の選手以外はマスク着用を義務づけるなど感染対策もしながらの大会となった。

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運営のひとり「ファイブスターFC」のビー・ジェイム・アウンさん(右)

「いつもはみんなで練習したり、ときどき日本人やベトナム人のチームと試合してるんですが、今回は協力して募金をしようと思って企画したんです」

 その呼びかけに多くのミャンマー人が応じた。日本国内にもミャンマー人のサッカーチームがこれほどたくさんあるとは驚きだが、そのすべては男たち。負けてはいられないと、今回のチャリティーに合わせて女子たちもチームを作って参戦したというわけだ。

 ナン・シャン・カンさんはそのひとつ、TYNJ Angelsを結成した。TYNJとは「シャン民族青年ネットワーク・日本」の略で、チーム名にAngelsをくっつけるあたりがかわいいが、本来は日本に住むミャンマー国内の少数民族・シャン族の集まりだ。

TYNJ Angelsのメンバー。3本指は軍への抗議を示すサイン

「ふだんからみんなで、寄付をしようと活動してるんです。私は毎月1万円が目標」

 日本に来て8年目、日本語は達者でエンジニアとして働く社会人なのだが、月1万円の寄付はなかなかたいへんだと思うのだ。加えて大会のためにユニフォームやスパイクを用意し、協賛金もチームメイトで分け合い参加したが、

「お金ばっかり出してねえ、アハハハ」

 と笑う。こうしてみんなで楽しみながら協力し合おう、寄付をして助け合おうというのはミャンマーの文化だ。

 イギリスのチャリティー団体とアメリカの世論調査企業が調査する「世界寄付指数」という指標がある。「見知らぬ人を助けたか」「寄付をしたか」「ボランティア活動をしたか」といったアンケートを数値化したものだが、この指標の2009年から2018年の10年間トータルで、ミャンマーはアメリカに次いで2位にランキング。「世界2位の寄付大国」なのだ(日本は107位)。ニュージーランドやオーストラリア、カナダといった先進諸国を抑えて、まだまだ経済的に立ち遅れたミャンマーに、助け合いの文化が根づいていることを表している。その心は、日本に住むミャンマー人の若者にも息づいているのだ。