今年2月にクーデターが起きたミャンマーで、国軍に拘束されていた日本人ジャーナリストの北角裕樹さんが解放され、5月14日に帰国した。2014年から最大都市・ヤンゴンに住み、取材を続け、情報を発信してきた。
しかし、クーデターの取材中に“虚偽のニュースを発信した”などの疑いで2度逮捕された。現在は新型コロナ対策のために、自宅待機となっている。そんな中、5月18日、筆者の電話インタビューに答えた。
「スーチーさんが捕まったらしい」と
――クーデター中のミャンマーで“虚偽ニュースを広めた”とする罪などで起訴され、収監されていましたが、逮捕から26日ぶりに解放されて、帰国しましたね。
北角 日本に帰国したのは2年ぶりです。しかし、新型コロナの水際作戦のため、最初の3日は成田市内のホテルで、その後は自宅で待機となっています。そのため、まだ社会に出ていないのと同じで、解放された実感はありません。
ミャンマーに住むようになったのは、2014年末です。日本での仕事を辞め、しばらくは無職でふらふらしていました。ノープランで、気になる世界の国を旅していました。ミャンマーはその一つでした。いい国だなと思っていましたし、1年後に総選挙がある時期でした。「ちゃんとした選挙をするのかを見てみよう」と思っていました。そんなとき、情報誌の求人があり、応募しました。1年ほど、編集に携わりましたが、その後、独立してフリーになりました。
――今年2月1日にクーデターが起きました。予兆は感じていましたか?
北角 2021年1月末に、20年11月の総選挙【筆者注:アウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)が8割を超える議席を獲得した】で不正があったと国軍が主張していました。また、ヤンゴンの街中では装甲車が目撃されるなど、不穏な雰囲気が漂っていました。しかし、私も含めて、ヤンゴンの人たちは、国軍がクーデターを起こすとは思っていませんでした。
そんな中、2月1日未明。クーデターが起きました。その日、ヤンゴンではインターネットが通じませんでした。いろいろ話を聞くと、「スーチーさんが捕まったらしい」と。「軍が全権を掌握した」と。そうこうしているうちに、喫茶店で政府系のテレビ番組を見ていると、軍が非常事態宣言を発して、「国家統治評議会」が全権を掌握したと放送していました。