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「創世」に写っているのは大地、岩、広い空とそこに浮かぶ星々。モンゴルの荒野の夜を、ヘッドライトひとつを頼りに歩き出逢った光景だという。創世期の地球を思わせる鉱物と虚空からなる世界。写真と対峙していると、私たちが平然と立っているこの場所も宇宙の一部であり、踏みしめている大地は星の一部だと改めて思い知らされる。

 

写真でパラレルワールドを表現する

 山内悠さん本人に、作品の意図について話を聞けた。

「ひとつの国の中に、こんなにもいろんな場所や人、暮らし、それから過去も未来もあるということに、単純に驚きませんか? それらが平然と並び立っていて、それぞれの世界に行き来も可能だなんてスゴいことです。

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 今回はたまたま僕がモンゴルでそれを実感したわけですけど、こういうパラレルワールドが同時にいま此処彼処に点在していて、時間や空間は誰もがそれぞれで創り出しているのではないか。そんな気づきを表したくて、この『惑星』という作品と展示をつくりました。

 

 そして、『数々の世界が混在する』さまを俯瞰するうえで、写真というのはすごく向いているんですよね。写真は瞬間を切り取って、断片にして貯めていける。持ち帰ったいろんな『世界のありよう』を、あとからくっつけたり離したりしながら並べ直すと、並行世界を見つけることが出来、それぞれの世界は人の意識の中に至るまで存在することに気がつきます。そして、それらがそこの時間や空間を創り出しているようなものだと感じられます。

 並行した世界がすぐ近くにいくらでも同時にあって、それらのどれもが『いま』を生きている、僕はいま自分のいる場所や時間が自分の作り出した投影だとするといっそう愛おしく感じられたりするんですけど、どうですか?」

 

 たしかに山内悠の『惑星』を観ると、時間も空間も超えて世界は広がっており、それぞれの世界に誰かが生きていると実感できて、なんだか心強く思えてくる。モンゴルの壮大な光景の数々から、「自分がここにいること」の不思議さと歓びを感取してみたい。