実名を出され、犯人扱いされるのはさすがに辛い
ただ、爽彩さんと僕との関係性を知らないY中学校の同級生からは、トラブルをおこした僕は犯人グループと一緒に見えたのかもしれません。爽彩さんがウッペツ川に飛び込んだときも、学校や警察に呼ばれて事情を聞かれました。でも、僕はあの現場にはいなかったし、一切関わりはありませんでした。
爽彩さんが受けた酷い出来事について、僕はむやみに広めたくなかったので、爽彩さんのことはこれまであまり語らずにいました。ですが、イジメ事件について報道があってから、真相を知らない同級生が、ネットの人たちに乗せられて憶測で言いたいことを話すのには耐えられない。実名を出され、犯人扱いされるのはさすがに辛いです」
亡くなる2カ月前にdさんの元へ送られてきた爽彩さんからの手紙には、dさんへの感謝の言葉と共に絵が描かれている。dさんがイジメ事件には関わっていないことは先ほどの宮川さん同様、爽彩さんの遺族が断言した。
現在dさんは、ノイローゼ気味となり、連日不眠に悩まされている。宮川さんやdさんは既に警察や弁護士に相談しており、被害届を出すことを考えている。
元埼玉県警刑事部捜査第一課所属で、デジタル捜査班班長をつとめた佐々木成三氏が解説する。
「事件とは無関係であるにもかかわらず、実名や顔写真などの個人情報を流した場合は名誉毀損罪及び侮辱罪に問われる可能性があります。また(宮川さんのように)、店舗に繰り返し何度もイタズラ電話がかかってくるケースでは業務妨害罪にも該当する。間違った情報であっても、どんどん拡散されてしまうのはツイッターなどの特性ですが、そうした『名誉毀損』の書き込みをリツイートしただけでも、民事裁判を起こされた場合は、損害賠償の対象になり得ます。また、嫌がらせをする目的で待ち伏せをしたり、つきまとう行為は迷惑防止条例違反に該当します。ただ、現在ネットで横行している“晒し行為”の一番怖い点は、それが名誉毀損にあたることを拡散している当人が分かっていないこと。つまり当人に違法性の認識が低いことですね」
ネットリンチは形を変えたイジメ。遺族は望んでいない
今回、取材に応じてくれた宮川さんやdさんの他にもあらぬ疑いをかけられ、犯人グループの一員として実名や写真をネット上に晒された無関係の生徒は複数存在する。爽彩さんの親族が胸の内を吐露した。
「事件を知ってくださった方々が爽彩のことを考えてくださるのは本当にありがたいです。ですが、今はこれからはじまる第三者委員会の調査の結果を信じて待ちたいと思います。ネットリンチもまた、形を変えたイジメであり、我々は望んでいません。事件と関係のない方までもがネット上に晒されてしまう現状に胸が苦しくなります」
亡くなる直前、ネットが家庭以外の唯一の居場所だった爽彩さん。ネットを通して新たな「被害」が生まれてしまうことは彼女も決して望まないだろう。
4月30日(金)21時~の「文春オンラインTV」では担当記者が本件について詳しく解説する。
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