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《天皇陛下の“御心”を菅政権は無視?》宮内庁長官の異例発言「オリパラご懸念を拝察」の重すぎる意味

2021/06/29

genre : 社会, 政治

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西村長官は宮内庁に「送り込まれた」?

 西村氏は警察官僚出身で警視総監まで上り詰めた後、安倍政権下で内閣危機管理監を務めた。安倍政権は上皇陛下の生前退位の意向に翻弄され、悲願の憲法改正に向けた動きを封じられたことから、生前退位への道筋を推し進めた当時の風岡長官を事実上更迭し、西村氏を宮内庁に送り込んだと言われている。

 皇室担当記者が語る。

西村泰彦宮内庁長官 ©️共同通信社

「しかしそれは、安倍さんや菅さんの勘違いでした。西村さんは実直な能吏です。危機管理監として安倍内閣の危機管理を担ったからといって、政権の言いなりになるようなタイプではありません。宮内庁長官として西村さんは、国民とともにあろうとされている天皇陛下にお仕えしているという自負があるはずです。

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 西村さんの視線は今、官邸に向けられているのではなく、御所に向けられているのです。西村さんには自民党政権によって宮内庁に『送り込まれた』などといった意識は皆無でしょう。政権に忖度などすることなく、天皇陛下のご懸念を明らかにしたのは、それだけ陛下のご懸念が深刻なものだからなのです」

会見での天皇陛下(2021年2月)宮内庁提供

2日前に「内奏」が行われたにもかかわらず…

 今上天皇は昨年の4月と11月、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長からご進講(説明)を受けられている。その尾身会長が五輪開催や競技場に観客を入れることに再三再四、警鐘を鳴らしてきたことも報道でご存じのはずだ。西村長官の発言がある2日前の6月22日、今上天皇は皇居・宮殿で菅首相から「内奏」と呼ばれる報告を受けられた。

2019年5月、天皇陛下に「内奏」する安倍晋三総理大臣 宮内庁提供
2020年4月、尾身茂氏に接見される天皇皇后(赤坂御所 檜の間)宮内庁提供

 内奏は首相・閣僚らから国内外の情勢について天皇が内密に報告を受けるもの。侍従らの同席もなく2人だけの空間で語られる天皇の言葉は、政治利用される恐れがあることから口外しないのが原則だが、タイミングから考えても菅首相から五輪開催についての報告があったのは確実だろう。

 前出の宮内庁関係者が語る。