たまに“万馬券”を当てるから成功体験が忘れられない
というのも昨年末、Go Toキャンペーンにこだわりすぎての右往左往をみていたら、まるで1点買いの賭けに外れた人みたいだったからだ。何でこんなに追いつめられるまで頑固なのかとベテラン政治記者に聞いたらこんな解説をしてくれた。
「菅さんはトータルで言うと負けが多いギャンブラー。だけどたまに“万馬券”を当てるから本人は成功体験が忘れられない。それが今は裏目に出ている」
おさらいしてみたら、菅さんの賭けはたしかに負けのほうが多い。新人時代に梶山静六を総裁選に担ぎ出し、首相時代の麻生太郎に早期解散回避を指南して惨敗するなど、政局の大勝負にけっこう負けている。
しかし2つの総裁選で“万馬券”を当てているのだ。再び安倍晋三氏を担いで逆転勝利したとき(2012年)、二階氏と組んで自分が総裁選を制したときである。この賭けのおかげで今は首相なのだ。だからギャンブルには強いという自信があるのだろう。
首相が五輪に賭ける理由「五輪が始まれば…」
首相になってからの賭けは自分の政治生命だけでなく国民の安全安心や税金も賭けられることになる。それなら勝てる理由を丁寧に説明したり周囲の意見を聞くのが「首相の賭け」であるが、前のめり&意地になるクセがあるようだ。ギャンブラーとしてはかなり危うい。
五輪に賭ける理由としてよく見られるのが「五輪が始まれば国民は興奮し、盛り上がる」と首相は考えているという見立て。高揚した雰囲気の中で選挙をやると新聞各紙がふつうに書いている。
この「○○さえ始まれば」という考え、とても既視感があるのだ。どこかで見たぞ。
思い出した、これだ。
『「GW後は世間も忘れる」選挙全敗の与党、危機感なし?』(朝日新聞デジタル4月27日)
4月末に自民党が全敗した衆参3選挙があった。そのさなか、ある与党幹部が「大型連休までは結果を騒がれるが、その後は世間も忘れる」と述べた。
この「○○をすぎると国民は忘れる」というのと「○○が始まれば国民は盛り上がる(それまでのことは忘れる)」ってセットじゃないでしょうか。政府与党がよく言うパターンなのである。