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「玲空斗は自然が好きだったから樹海に埋めてあげよう」口にタオルをくわえさせ後頭部で縛り殺害…“鬼畜夫婦”の残酷な犯行

『「鬼畜」の家―わが子を殺す親たち―』より#2

2021/07/11
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玲空斗くんの成長の跡

 隣にいた朋美も、当然のように相槌を打つ。

「閉じ込めてる時は、ずっとTシャツとオムツ1枚にしてる。玲空斗はまだトイレができないから汚しちゃうんだよ」

※写真はイメージです ©iStock.com

 2人の言葉に驚いた有紗は、「そんなのダメだよ」と注意した。ところが、2人に悪いことをしているという意識はないようで、聞き流していた。

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 ここまでやっても、2人は罪の意識がなく、寝る前の1、2時間だけ外に出して他の子供と遊ばせていたことから、ちゃんと育児をしているつもりでいた。だがこれから先、玲空斗君をどうするかはまったく考えていなかった。朋美は「成長とともに(玲空斗君がケージに)入らなくなってしまうと思ってました」としか考えていなかったし、忍にしてもその場しのぎの性格を考えれば、計画などなかっただろう。彼は最初から最後まで、朋美に言われたことを何の思慮もなしに実行するか、その時の感情に流されて動くかするだけだった。

 2013年の2月に入る頃には、ケージの中の玲空斗君は衰弱が著しくなり、食事もろくに口にしなくなっていた。おそらく足腰の筋力は衰えて、立ち上がったり、何かを訴えたりするような気力すら残っていなかったと思われる。だが夫婦は、「(玲空斗が)食べなければお漏らしすることもない」と、2、3日に1度しか食事を与えないことにする。

 こうして、その日が訪れるのである。

 3月2日は晴れた土曜日だった。夫婦は朝7時に起き、長女と長男を車に乗せてショッピングモールに遊びに出かけた。玲空斗君と玲花ちゃんはアパートに置き去りにされていたが、すでにこの頃、外出の際はかならず監禁したままにするのが習慣になっていた。

 丸一日ショッピングモールで遊んだ後、午後8時頃には自宅近くの「華屋与兵衛」竹の塚店に寄り、しゃぶしゃぶ食べ放題のコースを注文した。「ベーシックコース」なら大人1人2000円強、小学生は半額だから、最低でも6000円超になったはずだ。

 一家は9時過ぎに帰宅し、忍は玲空斗君をケージから出してオムツを交換、夕飯にすいとんを食べさせた。忍が調理したもので、玲花ちゃんも一緒に食べる。玲空斗君は床にぺたんとすわって食べさせてもらいながら、「おいしい」とつぶやいた。この頃の玲空斗君はゆっくりとではあるが成長の跡をみせていて、嬉しかったり、よかったりすると、すべて「おいしい」と言っていたのだ。