6月28日午後、千葉県八街市で下校途中の小学生の列にトラックが突っ込み、児童5人がはねられた。2人が死亡し、1人が意識不明の重体、2人が重傷。過失運転傷害の疑いで逮捕されたのはトラック運転手・梅澤洋容疑者(60)。梅澤容疑者からは基準値を超えるアルコールが検出されたという。
くしくも1週間前の21日には、東京・池袋の暴走事故の裁判で、遺族の松永拓也さん(34)が初めて被告人への直接質問を行ったことが大きく報じられたばかりだ。「今も無罪を主張しますか」と問われ、“暴走事故”を起こした旧通産省幹部の飯塚幸三被告(90)はこう答えた。
「心苦しいと思っておりますが、私の記憶では(ブレーキとアクセルの)踏み間違いはしておらず、過失はないものと思っております」
愛する家族を奪われただけでなく、事故を起こした被告の無罪主張を聞かされる遺族の心痛は察するに余り有る。
平和な日常を突然奪う“暴走事故”は、なぜ繰り返されるのか。近年、「文春オンライン」特集班が“暴走事故”について報じた複数の記事を再公開する。(初出2019年6月13日、肩書き、年齢等は当時のまま)。
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「飯塚氏は車を降りてすぐ頭を下げ、数歩歩いてまた深々と頭を下げていました。杖をつきながらゆっくりと歩く姿を見て、相当衰弱しているなと思いましたね。余裕がないのか、献花の方には見向きもしませんでした」(実況見分に居合わせた男性)
4月、東京・池袋で乗用車が暴走した事故では、松永真菜さん(31)と長女の莉子ちゃん(3)の命が奪われ、10人が重軽傷を負った。6月13日、警視庁は乗用車を運転していた、旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長(88)を現場に立ち会わせ、実況見分を行った。
実況見分では、事故を起こした車種と同じ乗用車に飯塚氏と捜査員が乗り込み、暴走した経緯を確認。約150メートルにわたってゆっくりと走行した後、通行人を次々とはねた交差点で降車した。
「警察官が指差しでなにやら確認をしていましたが、飯塚氏は覚えていないのかたびたび首を振ったりかしげたりしていました」(同前)
約1時間半にわたる実況見分を終えた飯塚氏は警察車両に乗り込み、現場を後にした。
「飯塚元院長は『ブレーキが利かなかった』と供述していますが、現場にブレーキ痕はありませんでした。車の不具合も見当たらず、元院長の記憶を頼りに実況見分するしかない状況です」(捜査関係者)
都公安委員会は5月31日に、飯塚氏に対して運転免許の取り消し処分を決定している。
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