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源田に教えた「引っ張り」の技術

 辻監督の一番の功績は源田壮亮の遊撃手固定。大学、社会人を経てドラフト3位で入団したルーキーが、フルイニング出場を果たすとは誰が予想したでしょう。春季キャンプで、得意の守備力をアピールしていましたが、打力は「非力」のイメージが強かった源田。社会人時代は9番を任され、もっぱら反対方向に打つことを指導されていたようですが、辻監督は「引っ張り」の技術を教えました。なので、2番に座った時、無死1塁の場面でも簡単にバントのサインは送らず、1、2塁間に強い打球を転がし1、3塁とチャンスを広げたシーンを何度も見ました。

 これは、社会人の時に「スラッガー」といわれた辻監督がプロに入ってから右打ちに徹したケースとまったく逆のケースになります。アマ時代のイメージを脱却することに関しては身を持って体験した辻監督ならではの発想と言えるでしょう。昨年まで3年間続いたBクラスの要因はいろいろ挙げられますが、遊撃手の固定が大きな課題でしたので、それを解消した源田の努力、監督の意思が実を結んだ形です。

キャンプでの表情はまだ不安そうな源田壮亮 ©中川充四郎

 また、「審判を敵にしないこと」を信条としています。無用な抗議を避けるのは選手のリズムにも影響します。5月28日のKoboパーク宮城で行われた楽天戦でのこと。8回ウラ、4番手投手の田村伊知郎がジャフェット・アマダーに左翼ポール際に大きな打球を飛ばされました。3塁塁審の手が回り、判定は本塁打。テレビのVTRを見ると、明らかに打球はポールの左側を通過していてファウルだったのに。

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 後日、その件について聞いてみました。「確かに微妙でしたけど大差(13対2)だったから。接戦だったら、もちろんビデオ検証をお願いしたけど」とアッサリしたもの。打たれた田村も「しっかり腕を振らなかったからあそこまで飛ばされました」と反省材料に。ちなみに、あれがファウル判定だったら「プロ10万号」も別の選手が。まぁ、それを言ったらキリがありません。これが野球なのです。