次第に目を覚ましたソフトバンク打線
潮目が変わったのは第3戦だった。それまで1、2戦は楽天が主導権を握る形で試合をすすめてきたのだ。送りバント、継投策の徹底はファーストステージからの継続で、効果満点だった。秘密兵器というべきパワーピッチャー・宋家豪もハマった。楽天・梨田昌孝監督はその「型」の野球で、最短を走り切るイメージじゃなかったか。試合勘の戻らないソフトバンクを眠らせたままに。
第3戦、まず指摘しなければならないのはエース・則本昂大の背信のマウンドだ。ファーストステージ第1戦の屈辱を経て、どういう姿を見せるのかは野球ファンの注目だった。それがピリッとしない。捕手が(ファーストステージの)嶋基宏から足立祐一に代わり、配球面でも変化球主体の無難な組み立てだった。僕は食い足りない。則本の性格を考えたら、攻めの組み立てをする嶋でギンギンギラギラ行ってほしかった。西武戦の不面目はそういう形で晴らすしかないんじゃないか。
7回投げて7被安打2四球5失点(108球、11奪三振)。エースの役割としては相手打線をねじ伏せるべきだったから、5失点は仕事ができていない。が、活発な味方打線が取り返してくれて同点になった。則本は7回、意気に感じてものすごいピッチングを披露する。今宮、城所、デスパイネを三者連続三振だ。特にデスパイネへの投球は鬼神のようだった。則本は本来の姿に戻っていたのだ。
それが8回から福山博之にスイッチする。福山は5連投だ。僕は残念だった。あのスイッチの入った則本をソフトバンクがどう攻略するかが見たかった。僕はここが最大の分岐点だと見る。「型」の野球の難しいところだ。選手は状態もあるし、気持ちもあるし、流れもある。梨田監督や与田コーチは「出し切った」と判断したのかもしれないが、則本ってあそこでおさまるタイプだろうか。
日頃、ファイターズの野球を見慣れている自分からすると、そもそも楽天の継投は回またぎもあるし、疲労度を考慮してリスク分散させないし、けっこう違和感がある。起用法の前提が違う感じだ。まぁ、これはファイターズの吉井理人コーチの考え方のほうが特殊なのかもしれないが。
福山は8回裏、それまで殺してきた中村晃に決勝2ランを浴びる。で、9回の守備につく中村が涙ぐんでるんだよ。あれはチームがギューッとまとまる。翌第4戦でもそっくり同じことが起きた。岸孝之が5イニングで退き、6回裏、後を受けた宋が内川、中村に連続ホームランを浴びる。結局、楽天は則本、岸の表ローテで3、4戦を落としてしまう。
僕は眠っていたソフトバンクが次第に目を覚ます様をゾクゾクしながら見ている。川島慶三のチョンボ(川島は元ファイターズなので応援している)で始まり、墨田区八広の洋食「50BAN」でヤキモキしていたのが昔のことのようだ。あれから城所が張り切り、中村晃が気持ちを見せ、ついにデスパイネにも一発が出た。王手をかけて第5戦だ。さぁ、ペンを置いてゲームを楽しもう!
※附記 その第5戦、「1番センター」