被告人質問で池田被告は、検察官とこんなやりとりをしている。
検察官「AVの影響はあったのか」
池田被告「なかったわけではない」
検察官「フィクションと現実の区別がついていなかったのか」
池田被告「ついていた。まわりのことが見えなくなっていた」
弁護側の被告人質問への答えにも、池田被告の“ズレ”た空気感が如実に表れている。
弁護士「(A子さんを)懲らしめようというなら、やっていることに開きはないか」
池田被告「わいせつ目的がなかったわけではない」
弁護士「わいせつ目的100%だったのではないのか」
池田被告「わいせつだけなら力づくでできた」
弁護士「何が事件を起こした理由だと思うか」
池田被告「集中しすぎると、まわりが見えなくなる。懲らしめようと思っていた」
あくまでもわいせつ目的だけではなく、歪んだ正義感が原因だったと主張した池田被告。「この地域の万引きの担当を5年ほど1人でしており、店舗の経営者などが泣いているのを見てきた。それで万引き犯を懲らしめようと思った」とも言ってのけたのだ。
「警察やあなたの信頼は簡単には回復されない」
しかしこの主張は聞き入れられなかった。
検察側が「被告人はアダルトビデオやアダルトサイトに影響を受け、本件犯行を思い立った」「アダルトビデオを見て、自分も同じようなことをしてみたいと思い実行に移すこと自体が、幼稚かつ浅はかとしか言いようがない」と主張したのを受けて、菅原裁判官は「自身の性的欲求を果たす目的のほかに、万引き犯を懲らしめるために脅そうとの思いもあったと供述するが、そのためには法令に則って捜査等の職務にいそしむべきだ」と切り捨てた。
裁判には池田被告の妻も出廷し、「ひとりでやらないといけないことが多く仕事のストレスがあり大変だったと思う」と証言。弁護側は「妻も離婚もせずに池田被告を支えると言っている」と執行猶予判決を求めていた。
最終的に下ったのは懲役2年、執行猶予4年の有罪判決。裁判官は「被害女性の傷は癒えない」「警察やあなたに対する信頼は簡単には回復されない」などととどめを刺した。それを、池田被告はやや前傾姿勢で頷きながら神妙な面持ちで耳を傾けていた。
警察からは懲戒免職され、被害者とは80万円で示談。そして有罪判決を受けた池田被告。稚拙な行動によって失墜させた信頼の回復には長い年月がかかりそうだ。