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「最低でも2万~3万円のプレゼントを」“モテコンサル”を名乗る人たちへの強烈な違和感

その「モテテク」は相手にとって加害になっているかもしれない

2021/07/05
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 その上司は、やはり同僚に「見返り」を求めていた。狙いを定めた女性が自分の思い通りにならないことに腹を据えかねて激昂し、会社から前触れもなく姿を消したあとにストーカー化、職場の人間をも巻き込む大問題に発展してしまったのだ。

 彼女が身の危険にさらされ、自宅待機命令が出て会社へくることもできず、一人暮らしのアパートにも帰れず実家で匿われている期間に味わった恐怖は、どれだけのものだっただろうと思う。

期待した結果にならなかったとき、怒りの矛先は女性へ

 そういう女性側にかかる負担を考えずに「モテコンサル」が、「女性」がさも全員、一律に、どんな場合であっても「プレゼント」を喜び、そのプレゼントが性的な関係を構築するのに効果的であるかのように喧伝する無責任な行為に、ただただ怒りを覚えている。

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 私自身は「モテコンサル」という肩書きや、彼ら彼女らの言説が好きではないが、だからと言ってすべてを否定するつもりはない。誰かが「モテたい」と考える気持ちは尊重されるべきだと思うし、それ自体に加害性があるとは思わない。例えば「見た目を清潔に保つ」など、モテたいと願っている本人へのアドバイス的な内容であればそもそも問題もない。

 しかしながら「女性は○○すると喜ぶ」という、主語がばかみたいに大きな言説を信用して、あてにして、男性が女性に対して何かしらのアクションを起こしたとき、期待通りの反応が返ってこなかったことに激昂した男性から怒りの矛先が向けられるのは、弱い立場にいる「女性」である。

「女性は頭を撫でられるとドキドキする」という“モテテク”を信じて疑わない男性から、突然体を触られ、「嫌」と言いたくても言えない状況を作られて深い傷を負うのも、ここで主語にされている女性だ。

 そして、このような被害を受けるのは必ずしも女性だけではない。「若い男性はグイグイ来る肉食女性に弱い」という言葉を真に受けた女性から無理やり家に押しかけられ、立場上強く断ることができず、性行為を迫られた、といった被害を知人男性から打ち明けられることが、これまで少なからずあった。