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その「モテテク」を実践する前に
「女はこう」「男はこう」といった主語が大きなモテ論は、コンテンツとしてわかりやすくウケがいいかもしれないが、そもそも「頭を撫でられるのが好きでない」女性や「グイグイ来られるのが苦手」な男性の意思を無視する多様性の否定でもある。暴力に繋がりやすい性質上、特別、取り扱いに注意しなくてはならないものであるはずだ。
「モテ」という、結局は「個人による」話がここまで世間で持て囃されているのは、それだけ「モテ」をよりどころとしている人がいる証拠であるし、需要があるテーマであることは確かだ。しかし、それを実践にうつそうとするとき、必ず、一度冷静になって考える必要がある。
同意のないボディタッチは性的加害になりうる。関係性にそぐわないプレゼントは、たとえ「善意」のつもりだとしても、相手にとっては負担になりうる。同意をしていない相手に性的な行為を迫ることは「強制性交」であり、男女を問わず立派な犯罪だ。
ときどき、新卒で入った会社の飲み会で、隣に座った男性上司から頭や身体を撫でられ続けて、家まで泣きながら帰ったことをいまでも思い出す。また、違う男性の上司からの高級レストランの誘いを断ったとき、相手からのアプローチや連絡が暴力性を帯びたものになり、職場にいられなくなったこともあった。
もしも「モテテク」を誰かに実践しようとするならば、誰かに自分の欲求をぶつけるならば、まずは一度、相手にとって加害になっていないかどうかを、私たちはいつも慎重に考えなくてはならないのだと思う。