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《熱海土石流災害》「妻の名前、呼んだが反応なかった」「一家全員の安否不明」いまだ見えぬ被害の全貌、避難生活に一睡もできぬ住民も…

《熱海土石流災害》「妻の名前、呼んだが反応なかった」「一家全員の安否不明」いまだ見えぬ被害の全貌、避難生活に一睡もできぬ住民も…

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「崩れた自宅の中で挟まれている」という電話

 田中さんは赤くなった目で続ける。

「娘や息子、同級生ら3人に妻は『崩れた自宅の中で挟まれている』と電話していたことが後になってわかった。土砂で崩れてしまった家の木材に挟まれた後、再び土砂が流れてきて、一緒に流されてしまったのか、土砂に流された家の取り残された一部に妻が挟まれて、その上に新たな土砂が積もってしまったのか……。何もわからない。確実なのは妻に言われて知人の家の様子を見に行かなければ、自分も被害に遭っていたということ。今は待つことしかできない」

撮影・上田康太郎 ©文藝春秋

規制で避難所を捜し回ることもできない現状 

 田中さんの同級生である小川徹さん(71)も、今回の土石流災害で行方不明になった。

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 東京から駆けつけた小川さんの弟の60代男性は、

「目撃した向かいの人によると、兄は11時過ぎに自宅玄関から出たところを土石流に流された。もう1日以上経っているし、正直、厳しいと思う。でも、もしかしたらどこかに居るかもしれない。いろいろな避難所を捜して回りたいのに、規制線が張られていてうまく動けないし、情報も入ってこない。兄が住んでいた家は、私の実家でもあります。そこにすら行くことができないのが辛い。実家はどうなっているのだろうか」

 と肩を落とす。

撮影・上田康太郎 ©文藝春秋

 地元企業も対応に追われた。温泉などの保守点検や掘削業務を請け負う地元の松本温泉社(同市)の関係者(60代・男性)は、「配管設備なども見てまわりたいけど、規制線が張られていて、思うように動けない」と話し、こう続けた。