コロナウィルスの蔓延によってさまざまな業界が苦境に陥っているが、ネカフェ(インターネットカフェ)も影響を受けた業種のひとつだ。昨年の休業要請では数千人規模のネカフェ難民が退去を強いられ、倒産件数は年度ベースで過去最悪を記録した。

 現在はほとんどのネカフェが営業を再開しているものの、その利用のされ方はコロナ以前と様変わりしている。なかでも大きく変わったのが利用客の態度だという。ネカフェ従業員の多くが急増する「ヤバい客」にうんざりしているというのだ。

 コロナ禍のいま、ネカフェにはどんな人々が集まっているのか。池袋と新宿歌舞伎町のネカフェでそれぞれ働く従業員2人に話を聞いた。(取材・文=押尾ダン/清談社)

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大量の使用済みティッシュが散乱する個室

 山崎優太さん(仮名、32歳)は、池袋の繁華街のネカフェで働き始めて5年目の中堅スタッフだ。コロナ禍の現在も週に5日、店舗を訪れる多くの客に対応している。

──コロナ以前と以降を比べると、ネカフェの客層はどう変わりましたか。

山崎 以前のネカフェは、スーツ姿の営業マンが休憩するために使ったり、大学生が漫画を読みに来たりするような、ごく普通の場所でした。でも、数年前から定住先を持たずに店で寝泊まりするネカフェ難民が増え、コロナ禍の現在はお客さんの約8割がそうした人たちになっています。通常の利用をする新規客は2割程度しかいません。

 ネカフェを住居として利用する人の年齢層は20代から60代までと幅広く、持ち物から推察すると、若い人はウーバーイーツの配達員、中高年は警備員や単純労働の人が多いようです。なかには年金しか収入源のない高齢者、20代の若い女性もいます。どう使おうと客であることに変わりはないのですが、困るのは彼らの利用態度の悪さです。

©iStock.com

──具体的にどういう点が悪いんですか。

山崎 あらゆる面でひどいのですが、ひとつは個室の使い方です。たとえば、うちの店舗にほぼ住んでいる50代の男性は、朝になるとどこかに出勤するんですが、個室の清掃に行くとパソコンの画面がアダルト動画を見たままになっていて、そこら中に大量のティッシュが散乱している。毎日それをスタッフが片付けているんですよ。

 ほかにも、カップ麺やスナック菓子を食い散らかしてそのままにしていたり、個室に持ち込んだ漫画をボロボロにしたり、パソコン本体やマウスを壊したり、ドリンクバーから持ってきた飲み物を椅子や床にこぼしまくったりと、もうめちゃくちゃ。料金を精算せずに外出して、そのまま戻ってこない人もよくいます。

──たしかにアダルト動画を見て使ったティッシュを片付けるのは嫌ですね。料金の不払いにいたっては、詐欺罪に問われてもおかしくありません。

山崎 加えて一時期多かったのが、個室からアダルト系のライブ配信をする若い女の子の利用客です。チェーン店は個室のレイアウトに特徴があるので、映像を確認すればうちの店舗だとすぐにわかるんです。

 ひどいケースだと、チャットを通じて相手の男性を店舗内で探して合流し、個室での性行為をライブ配信する女性客もいました。