1作目から20年。「ワイルド・スピード」シリーズが、「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」で9作目を迎える。このシリーズの魅力は、物理の法則を無視したド派手なカーアクション(飛行機から車が飛び降りる!)と、メロドラマふうのストーリー(愛する人が記憶喪失になって自分を忘れてしまった!)。今回も、車は宇宙に行くし、ヴィン・ディーゼル演じるドム(ドミニク)の弟が突然登場するし、ツボの押さえ方はさすがだ。
しかし、本作で一番ありえなくて、しかも嬉しい展開は、サン・カン演じるハンが戻ってくることである。そうなったのは、すべてファンのおかげだ。
仲間内で唯一のアジア系であるハンは、3作目「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT」でシリーズに参加。映画の最後で死ぬのだが、時間を巻き戻した4作目「ワイルド・スピード MAX」の冒頭で再登場し、時間軸が3作目につながる6作目「ワイルド・スピード EURO MISSION」の最後で再び死ぬ。だが、彼を殺したデッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)が、その後の映画でドムの仲間たちと手を組むようになったばかりか、ショウとホブス(ドウェイン・ジョンソン)を主人公にしたスピンオフまで作られると、ファンの間で「#JusticeForHan」運動が巻き起こったのである。
「あの運動について初めて聞いた時は、驚いたよ。だけど、無視することにした。あの役はもう終わったんだし、考える必要はないと思って」と、カンは振り返る。
「だけど、ソーシャルメディアでますますあのハッシュタグを目にするにつれて、この人たちは真面目に言っているんだと気づくようになった。彼らにとって、ハンは意味のあるキャラクターなんだよ。そして僕は、ハンは何を象徴するのか考え始め、その人たちに敬意を感じるようになったんだ」