駅員のミスを同人誌で…本当にヤバいのは「こんな鉄オタ」
駅を利用するのは通勤、通学、旅行客だけではない。鉄道マニア、通称鉄オタも趣味の一環で駅を訪れる。「鉄オタはジャンルによって“めんどくささのレベル”が異なる」と、前出の桜井さんは語る。
「おそらく、みなさんがイメージする鉄オタは大きな望遠レンズをつけた一眼レフや脚立を持つ“撮り鉄”だと思います。彼らは撮影するときに場所の取り合いをしたり、作品をネット上に発表するので、存在感があるんですよね。でも『列車の運行を妨げるので出ていってくれ』と注意すると、文句を言いながら出ていくのでさほど害はありません。駅員として関わりたくないのは“乗り鉄”と“音鉄”です」
乗り鉄とは、鉄道に乗ることを重視する鉄道ファンを指す。目的地までの最短ルートを探求する人や路線の制覇を目指す人など、その趣味嗜好は多岐にわたるという。列車に乗るだけなら問題ないように思うが、桜井さんは首を振る。
「全員とは言いませんが、駅員にわざとルートに関する質問をしてミスリードを誘うんです。もしも駅員が間違った回答をしてしまうと『◯◯駅の駅員は使えない』とネットでさらされたり、同人誌に書かれて頒布されてしまったりします。新人の駅員だとトラップに引っかかる確率が高いですね」
発車メロディが1曲全部放送されないと怒り出す“音鉄”
野田さんはルートに関する質問には、緊張感を持って答えているという。もう一方の“音鉄”は、駅や列車にまつわる音を愛好する人々だ。
「発車メロディや車内放送、車両の走行音を録音する人が多いようです。ただ音を楽しんでくれるだけならいいのですが、発車メロディが1曲全部放送されないと怒り出すんです」
発車メロディが途中で止まると「1曲分流せ」と、クレームを入れてくるという。個人の趣味に口を出すつもりはないが、業務のジャマはしないでほしい、と桜井さん。
「毎日過酷で仕事がイヤになる日も多いです。でも『自分たちがトラブルと戦っているからこそ、安全に電車に乗れる人がいる』と、自分を鼓舞しながら仕事をしています。それが唯一のやりがいですかね」
多種多様な“ヤバい乗客”に、真正面から立ち向かう駅員たち。彼らのおかげで、私たちは安心して列車に乗ることができるのだ。