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 インパクトが大きいのはトイレ関連のトラブルだが、彼女は“女性の駅員”という特徴から、客から心ない言葉をかけられるストレスも大きいという。

「改札の横で座って待機していると、何のトラブルもないのに話しかけて来る男性がいるんです。『女のくせに』とか『女だから安定した仕事に就けたんじゃないのか』とか、意味不明な悪態をついて去っていくんですよね。構内で杖を振り回して暴れていた老人は私に殴りかかってきたのですが、警察が来たとたんシュンとしてました。私が女だから暴力を振るってきたのかな、と思っちゃいました」

 桜井さんは今の仕事をはじめてから年々精神的に強くなっている気がする、と、ため息をつく。

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理不尽すぎるクレームの数々

 野田敦史さん(仮名)もまた、日々理不尽な乗客と戦っている私鉄駅員のひとりだ。夜の酔っぱらいも迷惑だが、始発が動き出す早朝はとくに注意が必要だという。

「終電後は駅に人が入らないようにシャッターを閉めるのですが、前の日に終電を逃した人がシャッターの前で寝ていることがよくあります。早朝、僕がシャッターを開けるときに彼らも目を覚まして、開口一番『終電逃しちまったじゃねえか! どうしてくれるんだ!』と、怒鳴ってくることもしばしば。終電直後ならまだしも、翌日にキレられても返事に困りますよ」

 そして、列車内の安全を確保するのも駅員の重要な仕事だ。もしも車内で迷惑行為をする人がいれば、近くの駅に停車して駅員が対応しなければならない。その日は「乗客がドアに張り付いて動かない」という事案が発生したという。

「朝のラッシュの時間帯に、車内で体を強く押されたと主張する女性がいたんです。『犯人が捕まるまでここを動かない!』と、ドアに張り付いてしまったので列車は立ち往生。イラ立つ乗客からは『仕事行けねえだろ! 駅員がなんとかしろ!』と怒号が飛び、僕たちも説得しましたが女性は動こうとしませんでした」

 ホームには、次の電車に乗る予定の乗客が押し寄せて大混乱に陥った。男性駅員が女性客に触るのはセクハラのリスクが高いため、無理に下ろせないという事情も事態を悪化させた、と野田さん。

「我々では対応ができないので、警察に来てしてもらいました。ただでさえ忙しい朝に、どっと疲れましたね」