昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2017/10/30

定時運転を維持しながら「修理」も

 もちろん運転士の仕事はこれだけではない。運転中に生じた車両のトラブルなどに対応するのも重要な仕事のひとつだという。とは言え、そんなに車両のトラブルなんてあるのだろうか。個人的には遭遇したことはないんだけど……。

「安全な運転には支障がなくダイヤも乱れないものならありえます。私たちは、計算して定時運転を維持しながら処置をしています。だから、運転中は先程お話した計算を続けながらハンドルを握り、さらにモニターに映る車両の状況も見て、ときには処置対応をしなければならない。視野が広くないと新幹線の運転はできませんね」(七村さん)

 

 運転中、脳内では速度の計算をしつつモニターや窓の外などに視線をやってトラブルが起きれば即対応。300km/hで走りながらのことだから、素人目線でもいかにも忙しそうなお仕事である。

車窓を見ればだいたいの位置がわかる

 ちなみに駅までの距離はモニターに表示されるキロ程から計算することもできるし、線路脇の支柱に書かれた数字から判断することも可能。ただ、ベテラン運転士たちは「車窓を見ればだいたいの位置がわかる」という職人技も持つ。

「最初はなかなか車窓に目をやるほどの余裕がないんですけどね。岡山駅の近くに饅頭の工場があって大きな看板があるんです。見習いの若い運転士には目印になる景色をメモさせるんですが、たいていが『大手まん“じ”ゅう』と書く。でも、実際は『大手まん“ぢ”ゅう』なんです。だから、君は見ているようでも見えていないね、と(笑)」(七村さん)

岡山~相生間 ©時事通信社

 “じ”と“ぢ”の違いなんて運転にはあまり関係なさそうな気もするが、これだけの視野の広さと注意力がなければ新幹線の運転士にはなれない、というわけだ。まさに新幹線が“運転士の花形にして最高峰”とされるゆえんである。

「1回の勤務で一番長い行程では、だいたい新大阪と博多を2往復するくらい。車掌は車内巡回をするので体力的に疲れるといいますが、運転士は座っているだけなので体力はそんなに。でも、脳みそはメチャメチャ疲れますね。新幹線は注目度も高いし。だから緊張感は常に持っていますね」(七村さん)

z