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アフガン取材や芸能事務所での軟禁…ライター人生20年「死ぬかと思ったヤバい瞬間トップ3」

2021/07/14
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第2位「芸能事務所による軟禁と恫喝」

 次の「死ぬかと思った」は軟禁と恫喝である。ライターのような仕事をしていると、どうしても人を傷つけたり、企業にとって不利益な情報を公表したりすることがある。ライターや編集者は、その制裁を受けるリスクも抱えているのである。

 過去に東京ディズニーリゾートによる「他施設と比較をしてはいけない」との要求に従わず、比較記事を発表した際は出禁で済んだし、一流企業だけあって命の心配をするまでには至らなかった。

 ところが、相手が黒い交際を噂される芸能事務所のときはヤバかった。今回はライターではなく編集者として、この事務所に所属するタレントとあるアスリートの交際報道をニュースサイトに掲載した。すると、芸能事務所の社長から掲載元の会社のほうに以下のような電話がかかってきた。

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「おたくの〇〇ってサイトにウチの××の交際に関する記事が出てるんだよ。エッ! おたくはこれ、止められなかったの? オレへの恩義はどこへ行ったの? これ、さっさと謝罪したうえで、誤報だったと言え!」

 雑誌の場合、発売前に事務所からコメントを取ることは多い。あるいは、事前に「御社のタレントのこういう記事が出ますので」と伝える紳士協定的側面もある。それは、大きな出版社の場合、その事務所と付き合いのある部署が存在することが多いという理由もある。筆者の場合、ネットニュースだったため事前通告する義理はないと判断した。

 しかし、残念ながら週刊誌ほどの胆力はないので、筆者とサイト運営会社の社員と2人して即事務所へ謝罪に出向くことに。社長室の前には、なぜかガタイのいい男が仁王立ち。中に通されると、ふかふかの絨毯が敷かれており、金のネックレスを首にかけた社長が机に足を投げ出すようにして待っていた。

©iStock.com

「なんじゃーお前! なんじゃあの記事は!! ウチを普通の事務所だと思うんじゃねーぞ!!!」

 この一声だけで戦意喪失した。あとはひたすら社長の罵倒を聞き続けるだけの2時間。「このままドラム缶にコンクリート詰めにされて東京湾に沈められるのでは……」といった恐怖感もあり、逃げたかったが、大男がドアの後ろにはいる。だが、我々がいなければ記事を削除できないため無事解放を許された。

 ちなみに芸能事務所がらみの事件はこれだけでない。これまた黒い交際を噂される事務所所属のアイドルの素行を批判する記事を配信したところ、ファンが激怒。

 SNS上に「彼女の事務所はこの手の記事は絶対に許さない。書いたヤツと載せたヤツは震えて待て」といった書き込みがされ、「また軟禁されるのではないか……」と恐怖した。