いろいろと種類があった「栗林の脱帽」
ところで、そんな栗林の多すぎる脱帽をカウントしていると、同じ「帽子を脱ぐ」というアクションにも、いろいろと種類があることが分かったのでまとめてみた。
<栗林の脱帽その(1) ルーティーン脱ぎ>
栗林は、ブルペンやベンチを出てマウンドに向かう時、帽子を脱いで深々と一礼する。その直後、内野のラインをまたぐ前にも脱帽し、またも深く一礼。まだ一球も投げていないというのに、すでに2脱帽である。
このお辞儀は、彼が学生時代から続けているルーティーン。礼儀正しい所作を見ると、つい「健闘ヲ祈ル。」と敬礼してしまいそうになるのは私だけではないはずだ。
<栗林の脱帽その(2) 空振り脱ぎ>
空振りを取ると、高確率で帽子を脱ぐ。空振り三振を取った瞬間はもちろん、普通の空振りでも脱ぐ傾向にある。空振りを取るのは、おそらくピッチャーにとってかなりの快感。ほとばしる快感を、帽子を脱いで小出しに解放しているのかもしれない。
<栗林の脱帽その(3) 審判に敬意脱ぎ>
彼の持ち味であるフォークボール。投げるたびに、高確率でボールが地面にバウンドする。その度に、キャッチャーは新しいボールに替えることを主審に要求。主審はキャッチャーを介さず、栗林に直接ボールを投げ渡すことがある。
その時すでに、栗林は帽子を脱いで待っている。受け取ると、もちろん主審に一礼。また、ファールボールを打たれた時にも、審判から直接ボールを投げられることが多いのだが、その際ももちろん、帽子を脱いで審判からの送球を待っている。礼儀正しさがマメなのだ。
<栗林の脱帽その(4) 目上の選手に感謝脱ぎ>
ピンチになり、コーチや内野陣がマウンドに集結するような時。そんな場面でも、栗林は必ず脱帽する。脱ぐのは内野陣が全員集合した時だけではない。例えばショートを守る選手会長・田中広輔は、ピッチャーに頻繁に話しかけに行くタイプだが、そんな時も栗林は必ず帽子を脱いで対応。自分のためにマウンドにやってくる先輩に、栗林は謝意を惜しまないのだ。
<栗林の脱帽その(5) 最終的にはもはやかぶらない>
クローザーである栗林。ビシっと締めると同時に試合は終了する。すると、野手たちがマウンドに集まって勝利を喜ぶ。栗林はもちろん帽子を脱ぎ、野手のみんなと喜びを分かち合う。
その時、ベンチからは首脳陣や選手たちが出てきて一列に並び、笑顔でナインを迎え入れる。選手たちはエアーハイタッチをしながらベンチに戻るわけだが、栗林だけが帽子を脱ぎっぱなしで、選手やコーチひとりひとりに小さく頭を下げながら進む。そして、そのまま一度も帽子をかぶることなく、ダッグアウトに引き上げていくのである。もちろん、ベンチから下がる時に、グラウンドへの一礼を忘れることはない。
栗林の髪がペッタリして見えるのは、栗林がびっくりするほど礼儀正しい男だからだった。
ちなみに、そんな栗林。先輩キャッチャーである會澤や磯村がマウンドに行く時には、もちろん秒速で帽子を脱ぐが、年下の坂倉や石原が相手だと、汗を拭いている時以外はほぼ脱がない。徹底した体育会系の魂、そこもまた、実にいいのである。
※1 J SPORTS 4月10日の解説より
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