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苦しいときも悔しいときも…西武・山田遥楓の“声出し“が教えてくれたこと

文春野球コラム フレッシュオールスター2021

2021/07/15

※こちらは公募企画「文春野球フレッシュオールスター2021」に届いた原稿のなかから出場権を獲得したコラムです。おもしろいと思ったら文末のHITボタンを押してください。

【出場者プロフィール】パニーニ暮野(ぱにーに・ぼの) 埼玉西武ライオンズ 30歳。関東生まれ関東育ち。元々巨人ファンであったが、清水隆行氏を追いかけて西武ファンに。最近の夢は、メットライフドームの獅子ビルにあるクレーンゲームで、グッズをゲットすること。味噌ポテトが大好き。

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バリエーションが豊富だった山田遥楓選手の声出し

「あ゛ぁーーーーーいっ!!!!」

 という元気すぎる叫び声が、真っ先に聞こえてきた。

 2019年2月。私は初めて埼玉西武ライオンズの南郷春季キャンプを訪れた。メインスタジアムに足を踏み入れた瞬間、聞こえてきたのが、この叫び声。声のする方に目を向けると、そこにはチームの元気印、山田遥楓選手がいた。

 山田選手は、「熱男」ことソフトバンク松田宣浩選手を師と仰いでおり、一球一球のプレーごとに声を出したり、「熱男」をアレンジした「獅子男」パフォーマンスも行ったりと、師匠に負けない勢いでライオンズを盛り上げている。

 2020年以降のコロナ禍では、声出し等、感染リスクになる応援ができなくなった。だが、声援も応援歌もない中で、山田選手の声は一層グラウンドに響き、注目を集めたりもした。今年のキャンプでは、辻監督に「声を出せばいいというものではない」「元気なだけでは野球はできない」と言われてしまったそうだが、一方で、これまで監督からは直接指導を受けたりと、その双肩にかかっている期待は大きいように感じる。

 2年前、南郷での山田選手の声出しは、聞いていてとにかく楽しくて、私は聞こえたものをメモしていた。「あ゛ぁーーーい!!!」のような叫び声だけでなく、チームメイトを褒めるなど、バリエーションも豊富だった。

 山川選手が内野守備の練習をしている時には、「足動いてるよーーー!!!」。源田選手のしなやかな守備に対しては、「なんでそんなに柔らかいんですかーーー!!!」。三塁でタッチアウトにする練習で、中村選手がランナーにやさしくタッチした時は、「やさしいーーー!!!」。黒田コーチと守備練習をしている時には、泥だらけになりながら、「喉に砂が入りましたーーー!!!」。

 このまま南郷キャンプ中の山田選手の叫びを集めたら、1冊の本ができそうだと思った。

 この年、キャンプには数日間通ったが、2月7日、山田選手が体調不良でお休みと知った時は、膝から崩れ落ちてしまった。元気すぎるゆえに、自分の持っている元気を放出しすぎてしまったのだろうか……。山田選手のいないグラウンドは、何だか物足りなかった。

山田遥楓

私は部活の試合中の声援というものが怖かった

 山田選手の声出しを聞いていると、思い出すことがあった。卓球部に所属していた頃、「試合ではちゃんと声を出すように」と先生から言われていた。張本智和選手の「チョレイ!」のような、試合中に自分を鼓舞する時。そしてチームメイトの応援をする時。しっかり声を出してやるようにと、しょっちゅう先生は話していた。だが私は声援というものが怖かった。

「がんばれ!!」という言葉だけ聞けば、応援しているのだと分かる。しかし、その声色をよく聞けば、言葉に含まれた感情が分かってしまう。期待。興奮。励まし。それだけではない。焦りや恐れ、落胆といった感情も、言葉には乗ってしまう。それは当然のことであり、「声」とはそういうものである。

 しかし、試合の中で、苦しい状況であるほど、「がんばれ!!」の中の感情を読み取る感覚が、研ぎ澄まされていく。明るい声色であればプレッシャーになり、トーンの落ちた声色であればもうダメだ、と思ってしまった。どんな「声」も力に変えなければいけなかった。でも私にはできなかった。そんな自分自身も嫌になり、いっそ応援なんて要らない、と思っていたこともあった。