『薔薇はシュラバで生まれる―70年代少女漫画アシスタント奮闘記―』(イースト・プレス)の作者、笹生那実さんへのメールインタビュー第2弾は、過酷なアシスタント生活のなかの喜びと楽しさについて。実力もチャンスもありながら、漫画家を辞めてしまったことを、笹生さんはどう思っていたのだろうか。同じ漫画家でもあるご主人、新田たつおさんへの思いにも迫った。(全2回の2回目。前編を読む)
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「まんが家は3日徹夜、座りきり1か月、1日半の絶食ぐらい覚悟しなければ」
──1章で、中学生の時に初めて美内すずえさんに会った時のエピソードが描かれています。出会った瞬間、美内先生の絵によく出てくる「白目」になっていますが、この時の気持ちをネームに描くとしたらどんなセリフですか。
笹生那実(以下、笹生) 「嬉しい」に尽きます! 本当にずっとお会いしたかったので。
──アシスタント生活は、憧れの漫画家に会えたり、アシスタント仲間と友だちみたいに仲良くなれたりと楽しそうで、ちょっと憧れます。いちばん楽しかったのはどんなところでしたか。
笹生 アシに行っていちばん面白く楽しかったのは、漫画の話が全て通じることですね。学校の友達相手にはあまり話が通じない。昔は漫画好きの人間が少なかったんです。当時のコミケの参加人数は今の100分の1らしいです。
──楽しい一方で、1週間お風呂に入れないこともあるくらい過酷な作業場でもあったんですよね。「まんが家は3日徹夜、座りきり1か月、1日半の絶食ぐらい覚悟しなければ」という美内すずえさんのお言葉が衝撃でした。
笹生 あの頃の多くの漫画家は、実際そういう生活でした。そういう時代だったことと若かったからできたことですが、今は健康の大切さがよくわかるようになりました。絶対、真似したらいけません!
生命体として一番危険なのは、1日半の絶食や1週間お風呂に入れないことよりも、眠れないこと。精神状態もおかしくなります。異様にハイになったりね!