──同じ「子どもの親」であるはずのご主人が漫画家を続けているのに、ご自身が引退されたことを不公平に感じたり、後悔したりということはなかったのでしょうか。
笹生 もしかしたら子どもがいなくても、あの夫の仕事ぶりを見てたら同じ結果だったかも。何しろ、ほぼネームやらずにいきなり原稿描くし。絵はデッサンの狂いがあろうと気にせずに、さっさと描き上げる。それで人気もある。やる気なくします……。
20歳の自分には、60代半ばが一番いいかもしれないよ!と言ってやりたい
──いま、「シュラバ」経験をふり返ってどう思われますか。
笹生 過酷なシュラバであっても、あの頃は漫画だけ描いてればよくて、ある意味しあわせだったと思います。大人になると煩雑な用事や役割も増えますからね。好きなことだからこそ、頑張れると知りました。そうではないことを頑張りすぎたらいけないと思いますよ。
──子育てにも役立ちそうなお話ですね。お子さま方にも、「シュラバ」時代の武勇伝は語り継がれたのでしょうか。
笹生 子どもにとっては親の武勇伝など、なんにも響かないと思うので話しませんでした(笑)。今はとっくに子どもじゃないので、もし聞かれれば話します。
──笹生さんは60代で漫画家再デビューを果たし、Twitterを使いこなすなど、新しいことに挑戦し続けておられます。その意欲と活力はどこからわいてくるのでしょうか。
笹生 人が死ぬ時にする後悔は「やらなければよかった」よりも「やればよかった」だと聞いて、やりたいことは可能な限りは、やっておこうと思うようになりました。
本を出版後、トミヤマユキコ先生著『少女マンガのブサイク女子考』と、ムック『私たちがトキめいた美少年漫画』に短いエッセイ漫画を描かせていただき、最近では雑誌『フリースタイル』48の「短篇マンガの秘かな愉しみ」という特集に参加させていただきました。自分の好きな漫画に関することを書かせていただくのは、とても光栄で嬉しいです。
──笹生さんの「#二十歳の自分に言っても信じないこと」のTwitter投稿も話題になりました。今、あの頃の自分にどんな言葉をかけてあげたいですか。
笹生 20歳の自分に……そうですね、家庭内での役割が少しずつ軽くなってきた60代って悪くないよ、ていうか! 60代半ばが一番いいかもしれないよ!と言ってやりたいです。
(取材・構成:相澤洋美)