道具を愛する選手であるほど、まちがいなく野球がうまくなる
錦林ジュニアAチームの選手たちに、試合で使っているバットを見せてもらった。
10人中、5人がミズノ。うちわけは、3人がギガキング、1人がメガキング、1人がビヨンドマックスを使用。
2人がローリングス。ともにハイパーマッハエアを使用。
2人がゼットのブラックキャノン、1人がルイスビルスラッガーを使用。
一日のみミズノの金属バットを使用。しかし、ギガキングを買って持ってはいるので、10人中みごとに10人が、「ビヨンド」を端緒とする、いわゆる「複合素材バット」を持っている。
バットはもともと、まっすぐな棒ですらなかった。19世紀中頃、アメリカでの試合風景を描いた図像には、細長いしゃもじのようなクリケットのラケットを構えて打席に立つ選手の姿が描かれている。
使われる道具はばらばらで、四角い板や角材を振りまわす打者もいた。ぎりぎり20世紀を迎えようかという頃、ようやく「断面が丸い木製の棒」と、レギュレーションが決まった。
ちなみに、阪神タイガースの現レギュラー陣が使っているバットは次のとおり。
梅野、SSK。
マルテ、marucci。
糸原、ミズノ。
大山、ミズノ。
中野、久保田スラッガー。
サンズ、marucci。
近本、YANASE。
佐藤、ミズノ。
近本選手のバットは木製バット専門メーカーYANASE製。以前、試合前にバット1本ずつと会話する、とインタビューで語っていた。その日の体調に合わせてベストなバットを選ぶ、と。
道具に語り、その声をきく。泥や汚れをおとし、クリームを塗り、理想のかたちをつけてそっと寝かせる。
荒削りの角材が、およそ200年後、ウレタン樹脂の「ビヨンド」にかわっても、野球にのめりこむ少年たちのこころは、それほどまでには変わらない。道具を愛する選手であるほど、道具に愛され、野球に愛され、まちがいなく野球がうまくなる。
7月22日、錦林ジュニアは2大会で、たまたま同じチーム(城陽スネーク・北城陽OIクラブ連合)と当たるダブルヘッダー。
1試合目は「中信杯」。エースの加納明虎選手が15アウト中11三振を奪う快投をみせ、打線も「飛ぶバット」ビヨンドマックスが炸裂し、8-1のスコアで5回コールド勝ち。
2試合目は、昨年優勝をかざった「城陽大会」。先発の石井一日選手が初回に2点を取られたものの、その後は粘りのピッチングをみせ、援護を待つ。選手たちのビヨンドはヒットを散発するも、残塁が目立ち、7回を戦って0-2の惜敗。悔し涙がそれぞれのバットを濡らした。
立ちあがり、汗と涙をぬぐう。野球少年の夏はまだまだ終わらない。
◆ ◆ ◆
※「文春野球コラム ペナントレース2021」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/47179 でHITボタンを押してください。
この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。