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五輪開会式の日に横須賀スタジアムへ 僕の考える「スポーツ」はここにあった

文春野球コラム ペナントレース2021

 東京2020の開会式に合わせて、東京オリパラ特措法により7月23日に変更された「スポーツの日」だ。東京の街は昼からブルーインパルスの飛行で浮足立っていた。僕は気がすすまないのだった。僕くらいスポーツ好きのお調子者も滅多にいないと思うのだが、今回はオリンピックに乗りはぐれていた。

 率直に言ってオリンピック無理じゃないかと思った。新型コロナウイルスの感染拡大局面だ。日本全体でも、東京都に限ってみても実効再生産数は「1」を超えている。また厄介なのは感染力の強いデルタ株への置き換わりだ。続々入国する選手団の報道でバブル方式がザルなのは理解した。ザルならば双方の経路で感染が拡大し得る。「スーパースプレッダー・イベント」という耳慣れない用語がリアリティを帯びてくる。

 そしていちばん大きいのは開催の心理的効果だ。現にブルーインパルスが飛んで皆、はしゃいでいる。お祭りだ。コロナで我慢を強いられてきたからタガが外れる。嫌だなぁ、開会式見たくないなぁと思った。開会式は直前になって小山田圭吾氏、小林賢太郎氏がそれぞれ辞任・解任ということになり、何かもうバタバタだった。まぁ色々とみっともない話だ。本当にすっかり幻滅していた。

 で、イースタン・リーグを見に行くことにしたのだ。

そんなこと以前に野球が大好きなんだ

 奇跡のような試合開催だった。7月23~25日横須賀スタジアム、17時45分開始の薄暮ナイター、横浜DeNAベイスターズvs北海道日本ハムファイターズ。ネットで日程表を確認したときは、おおっと声が出た。もろに開会式とかぶってる。この日、横須賀スタジアムへイースタン見に行く人は、少なくとも「一生に一度の自国開催」(二度の人もだいぶいるだろう??)の開会式冒頭を見逃す気マンマンでいることになる。閑散としているだろうか。それとも案外人気だろうか。スカスタの夕涼みだ。もう考えたら行きたくて行きたくて仕方なくなった。

 オレの「スポーツの日」は断然こっちだよ!

 昼下がり、まだクラクラするような暑さのなか、都営線の浅草駅に降りて京急三崎口行き特急に乗り込む。休日だから車内はガラガラ。情報によるとベイスターズは1軍メンバーが合流しているという。

 追浜駅に降り立ったとき、周囲にベイスターズユニの人がいっぱいいて嬉しくなった。駅や街路のディスプレーに「ドック オブ ベイスターズ ヨコスカ」の文字が躍る。オーティス・レディングが聴こえてくるようだ。駅から海へ向かう一本道を歩いていく。夏島小学校前の横断歩道を渡って追浜公園。うわ、もうベイスターズファンでいっぱいだ。

追浜駅のディスプレー。オーティスが聴こえてくるのだ。 ©えのきどいちろう

 すごかった。入場制限はしているけれど、横須賀スタジアムは満員札止めだ。入りきれないファンが行列をつくっていた。こんなに多くの人が東京2020の開会式を見ないのか。家が近所だとして、少なくとも最初の1時間くらいは平然と見逃すのか。球場内に入って、ブルーの人波を惚れ惚れ見渡した。あぁ、ここにオレと同質の人がいる。信じられる人がいる。オリンピックは賛成反対あろうけれど、そんなこと以前に野球が大好きなんだ。開会式やってようとやってまいと、チームが試合やるんだからフツーに観戦する。ベイスターズが最優先。推しが最優先。単にそれだけの話。

スカスタ。イースタン屈指の名球場ですね。 ©えのきどいちろう