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「空港のアルバイトは時給が1200円と少し高いので」

「以前はデータの入力ばかりでスキルが身に付かなかったので、空港のアルバイトは時給が1200円と少し高いので応募しました」

 時給が高く設定される仕事には大きく分けて2つある。1つは特別なスキルが必要な仕事、もう1つはリスクを伴う仕事だ。

選手村の入り口は厳重に警備されている Ⓒ文藝春秋 撮影・宮崎慎之輔

 1200円の時給が高いか安いかはさておき、今回の空港でのケースは明らかに後者だろう。

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 変異株が猛威をふるい始めた4月中旬頃から、空港検疫でのコロナウイルス陽性率は上昇している。渡航前検査や空港検査で陰性でも、入国後に陽性と判明したケースもある。

 しかも7月からはオリンピック関係者の来日が激増し、渡航前に2回のPCR検査を受けているはずの関係者の中からも、空港の検査で陽性が出るケースも少なくない。空港は、日本のコロナ対策のまさに最前線だ。

 オリンピックやパラリンピック、そして日本の安全を支える最前線では、多くの外国人を含む派遣スタッフが働いている。水際対策の行方は彼らに委ねられていると感じた。

「ワクチン接種は受けていません」

 関係者の来日が増えた7月14日には、夜中12時までのはずの勤務時間を超過して、自宅に戻ったのが深夜2時近くだったスタッフもいるという。激務で体調が悪くなれば、当然免疫力も落ちてコロナウイルスに感染する確率も上がってしまうのが心配だ。

 入国手続きの途中で最も驚いたのは、スタッフの多くが「ワクチン接種は受けていません」と言ったことだ。

「五輪関係者をはじめ、一般の旅行者からもコロナの陽性者が出ているので、早くワクチンを接種したいと要請しています。ただ、まだはっきりした日程は決まっていません。それにいま打てたとしても、2回目の接種が終わるのは五輪の閉会式の頃ですよね」(成田空港でオリンピック関係者の応対をする日本人スタッフ)

 彼らが成田空港での派遣業務に応募して、採用が決まってから勤務が始まるまではあっという間だったという。「名札につける証明写真を翌日までに用意するように言われたので、昔の写真を使いました」と苦笑いするスタッフの証言からも、ドタバタの採用だったことがわかる。

 勤務を開始する前にワクチンを打っている人はほとんどおらず、PCR検査も受けていない人が多いというが、それでも続々とやってくるオリンピック関係者の応対はしなければいけないのだ。