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入国手続きをする机では間隔が2m以下

 東南アジア系のスタッフが多く働いているオリンピック関係者のレーンの現状は上記のようだが、一般入国者用レーンもアメリカの空港などと比べて対策が行き届いているとは思えない場面も多かった。

 入国の際や昨年7月に米国内で飛行機を利用したが、どの空港のコロナ対策もかなり徹底されていた。人が触れたり座ったりする場所には常に清掃スタッフがいて、トイレや待合エリアの椅子も定期的に消毒されていた。空港の建物に入った瞬間に、消毒の匂いが漂ってきたほどだ。

 しかし成田空港では、入り口などに手指用のアルコールは置かれていたが、あくまでもその使用は個人に任されている。

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 入国手続きの書類を確認するブースでも、入国者とスタッフの間にはアクリル板が用意されているものの、隣に座る他の入国者との間には仕切りがなく、間隔は2m以下だった。

 紙の書類で手続きをすることにも、不安を感じた。出国前にオンラインで必要事項を記入しているにもかかわらず、それを紙に印刷して複数の係員に何度も手渡しで確認してもらう作業は、コロナ禍ではリスクが高い。しかも一連の手続きは、PCR検査の結果が出る前に行われる。つまり陽性の乗客がいた場合、現場で働くスタッフは陽性者と何度も近距離で対面することになるのだ。現場スタッフの胸元にはJAL Skyやパソナの名札がついていた。乗客よりも何倍も疲弊した表情を浮かべていた。

 検査後の書類確認場所や、検査後に1時間ほど待機する部屋の椅子や机を消毒している様子がないのも気になった。部屋の隅には空気清浄機が置かれていたが、湿度も高く汗のような匂いも漂い、十分な換気がなされているようには見えない。

東京の玄関口、成田空港 ⒸiStock.com

検査自体は厳密に行われているが…

「陽性者が空港での検疫をすり抜けた」という報道もあるが、検査自体はそれなりに厳密に行われていると感じた。しかし、書類確認や検査待ちの場所で他の乗客や空港スタッフと何度も間近に接するため、空港で感染して入国するケースがあってもおかしくない。

 現場のスタッフの方々は、本当に懸命に働いていた。限られた空港のスペースの中で、最大限距離が取れるようにという配慮も感じられる。しかし、それが十分とは言い難く、何よりワクチン接種を受けずに働くスタッフたちの心中を想像すると胸がつまる。

 オリンピックと日本のコロナ対策の最前線で働く人々が安心して働ける環境ができることを願わずにはいられない。