7月26日に行われた東京五輪体操の男子団体決勝戦。橋本大輝、北園丈琉、萱和磨、谷川航の4人が全員五輪初出場であるにも関わらず、堂々とした演技でミスなくこなしていく。そして最後の種目の鉄棒で、19歳のエース橋本が高難度の技を次々に決め、一分の狂いもなく着地を決めた瞬間、なぜかロンドン五輪の競泳男子400mメドレーリレーのシーンが思い出された。
「康介さんを手ぶらで帰すわけにはいかない」
個人種目でメダルを逃した北島康介に対し、メドレーリレーに出場した松田丈志らが発した言葉だった。体操団体の4人も、2日前に種目別鉄棒で落下し予選落ちしたキング・内村航平に思いを寄せ、同じ思いで演技したことは容易に想像できた。
「航平さんを手ぶらで帰すわけにはいかない」
優勝したROC(ロシアオリンピック委員会)に僅か0.103及ばず、銀に終わったが、
彼らの演技からそんな思いが伝わってきた。事実、内村の予選落ちを目撃した橋本はこう語っていたという。
「代わりに僕が鉄棒で獲って、航平さんの首に掛けたい。最高に一番きれいな色を、最高に一番似合う人に」
体操選手にとって内村は特別な存在だった。橋本は内村を心の底から尊敬し絶対的な存在と崇めているし、北園は人生の恩人とも語っている。