モラルがない恐怖
両方ともリアルタイムで読んだのですが、「なんでこんなの載せてるの?」と思った記憶があります。だって、誰も得をしないじゃないですか。加害者は悪く思われる。事実だとするなら、被害者はこのインタビューの存在を知れば、さらに傷つく。それを掲載した雑誌は当然モラルを問われるし、バカだとも思われる。
『クイック・ジャパン』の記事などは、被害者とされる人と直接コンタクトをとって小山田氏と対談をさせようとまでしていて、「この想像力のなさはなんなの?」と心底驚かされます。編集者がいじめを善悪ではなく俯瞰で考察するみたいな自分の企画に酔っているだけで、何も考えてないのです。
いじめをする人間というのはいくらでもいますし、そういう人間が過去のそういう所業を反省しないまま出世したりすることもよくあります。大人になっても大して変わらず、パワハラ三昧の人間になっていたり。ただ、そのことを大っぴらに発信する人間というのは、あまりいません。
普通は、世間のモラルというやつが許さないからです。改心しようが、改心してなかろうが、身内の席ならともかく、公の場では発言しないのが普通です。そういう部分にすら考えがいたってなかったというのは、異常な事態です。過去の懺悔がしたいという趣旨ならわかりますが、別にそういうトーンではないですし。
根本敬的な方法論を踏まえたつもりで掲載したのかもしれませんが、もしそうなら基本的な部分で大きな誤りがあります。当時の根本氏の著作では、基本的に観察しているサイドが観察対象に対して危害を加えることはありません。他人に危害を加えるようなタイプの観察対象は存在しますが、あくまで観察される側です。奇妙なことに、ここでは観察される異常者の役割を小山田氏が果たしてしまうことになっています。