両年とも最も転入超過数が多かったのは20~24歳だ。大卒後などの就職時に上京した人が多かったのだろうか。ただし、2020年は2割ほど減った。
2020年に転入超過数が多かったのは、続いて15~19歳だった。東京の大学などへの進学と見られる。さらに25~29歳、10~14歳と続くが、転入超過はこれら4つの年代だけで、他は転出超過だった。2018年は8つの年代が転入超過だったことを考えると、東京への人口集中の勢いは弱まっているようだ。
一方、転出超過数が最も多かったのは両年とも0~4歳だった。出産が都外の広い家に移り住む動機になっているのかもしれない。2020年は2018年の倍以上に増えた。
2020年に転出超過数が多かったのは、続いて30~34歳、35~39歳、40~44歳。子を持つ親世代だろう。0~4歳の転出超過とセットで考えれば分かる。5~9歳も2018年は転入超過だったが、2020年は転出超過になった。
同じ転出超過でも2018年の2位以下は65~69歳、60~64歳、55~59歳で、2020年とは様相が異なる。定年退職するか早期退職するかして、地方へ移住したり、故郷へ戻ったりした人だろう。これらの年代は2020年の転出超過数も軒並み増えたが、それを上回って子育て世代が流出した。
“東京脱出”した人はどこへ行った?
ところで、東京から移住する場合、どこが多いのか。
2020年の「住民基本台帳人口移動報告」で、東京都から各道府県への転出超過数を調べると、(1)埼玉県1万1431人(2)神奈川県6874人(3)千葉県4539人(4)沖縄県475人の順だった。大ぐくりに言うと、東京に隣接する埼玉、神奈川、千葉の3県へは「脱出」した人の方が多かった。前述の年代別分析と併せて考えると、一定の世帯像が浮かぶ。
「子供も生まれたし、リモートワークも始まったので、田舎へ移住してみようかと夫婦で話し合ったこともあります。でも、出勤しなければ仕事にならない部分も多く、ワクチン接種が進むなどしたら状況が変わるのではないかという気もしています。ただし、リモートワークがなくなるわけではないでしょう。毎日通うのでなければ、隣県ぐらいなら移り住んでもいいかなと思っています」(区内在住の30代女性)というような人である。