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東京への“人口流出”が最も多かった県は……

 首都圏内での“流出”。既視感のある現象だ。バブル経済で東京の地価が高騰した頃、やはり郊外へ転出する世帯が多かった。理由が違うとはいえ、東京の人口は通勤できる範囲内で循環していく傾向がないだろうか。東京から転出超過となった埼玉、神奈川、千葉の隣接3県は、その他の道府県に比べて転出者数も転入者数も飛び抜けて多い。

「田舎への移住は大きな決断を伴います。転居後も同じように続けられる職種は限られ、多くは転職が前提です。リモートワークで出勤日が減る程度なら首都圏移住の方が気軽」と50代の会社員は話す。

「田舎には娯楽がない」と言い切る人もいる。東京へ遊びに行ける範囲での移住なら、確かにショッピングやイベント、コンサート、展覧会など楽しめる機会は多い。

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 実際に、東京に隣接した3県と沖縄の計4県以外は、全ての道府県が東京に対して転出超過だった。多かったのは6000人台の愛知県。5000人台の大阪府。3000人台の兵庫県と福岡県。2000人台の宮城県、新潟県、静岡県。1000人台の北海道、青森県、福島県、茨城県、岐阜県、京都府、岡山県、広島県である。

都心で人口集中が進んでいた

 こうして、コロナ禍であっても人を集め続けてきた東京。

 このほど発表された2020年国勢調査の速報値によると、全国に1741ある市区町村で、この5年間の人口増加率が実質的に最も高かったのは東京都中央区だ(#2のランキング表を参照)。

 東京でも都心で人口集中が進んでいたのである。

 だが、詳細に見てみると、不思議な現象が起きていた。同じ中央区内でも過去10年間で人口が14倍以上に増えた地区がある一方で、3分の1ほどに減った地区もあったのだ。

 一体、どういうことなのか。そこには東京の人口集中の本質に迫る理由があった。

#2に続く

※人口の出し方には2通りある。住民基本台帳上の人口と推計人口だ。推計人口は5年に1度行われる国勢調査を起点に住民票の増減を反映させて出す。だが、国勢調査は住民票を異動させずに住んでいる人も含めて把握する。このため推計人口と国勢調査の結果には5年間で差が出てしまう。

 

 2020年10月1日に行われた国勢調査で、東京都の人口は1406万4696人とされたが、2015年の国勢調査を起点にした推計人口は1397万1109人だった。つまり住民票を移さないで流入した人口が9万3587人もあったことになる。

 

 推計人口は国勢調査を基本に計算するので、5年ごとに差を埋めなければならない。東京都は国勢調査の結果が出るたびに、過去5年間の推計人口を補正しており、今回は7月28日にその補正数字を公表した。これだと東京都の人口が1400万人を超えたのは2020年5月1日ではなく、10カ月もさかのぼった2019年7月1日だったことになる。しかし、当時の報道や社会認識を重視して、今回の原稿では都が補正を行う前、つまり2015年の国勢調査を起点にした推計人口を用いた。