今年7月、中国の習近平国家主席が「台湾統一は歴史的任務」と決意表明。人民解放軍は台湾海峡周辺での軍事行動を活発化させ、台湾侵略の「Xデー」も取り沙汰されている。
世界的な緊張感が高まる中、台湾の蔡英文総統は8月10日発売の「文藝春秋」9月号に登場した。聞き手は船橋洋一氏(アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長)。海外メディアの単独インタビューに応じるのは、2020年1月の英国BBC以来、約1年半ぶりである。
蔡総統は、武力を背景にした中国の覇権主義に対しては毅然とした姿勢を強調し、民主主義陣営の団結を呼びかけた。
「台湾の一貫した立場は、『圧力に屈服せず、支持を得ながらも暴走しない』というものです」
「民主主義、自由、人権は普遍的価値です。私共は北京当局に、香港やウイグルの人々への弾圧をやめるように呼び掛けていきます。日本も含めた民主主義陣営は、民主主義の価値を守るために今こそ団結すべきです」
その上で、香港の自由・自治を奪った習近平体制が台湾への適用を狙う「1国2制度」については、断固たる「ノー」を表明した。
「北京政府は台湾に対し、香港と同じ『1国2制度』による統一を呼び掛けました。この制度が実現不可能であることは現在の香港によって証明されており、北京政府の言葉を信用するのは難しいです。北京政府による『1国2制度』の提案は、絶対に受け入れられません。将来の選択肢にさえ入っていません」