国家安全保障局(NSS)局長を7月7日に退任した北村滋氏(64)が月刊「文藝春秋」の取材に応じた。同氏にとってNSS退任後初めてのインタビューとなる。
「どこかのタイミングで辞めるべきだし、そんなに長くやるべき職務ではない。今年の12月で65歳になりますから。既に報じられていますが、退任後、しばらくは右変形性股関節症の手術と治療に専念します。今年に入ってから夜も眠れないほど痛みが酷く、鎮痛剤を手放せない状態が続いていました」
北村氏が、NSS局長として最後に取り組んだ大仕事が、「経済班」の設置。その理由について「世界情勢の変化に対する危機感」と明かした。
「世界では正に今『経済安全保障』の時代が到来しています。安全保障の分野が近年、経済へと拡大しつつあるのです。今やAIやドローンを始めとした民間の先端技術が軍事転用されており、外国の情報機関が軍事、政治の機密情報を入手するのは、極論すると過去の話になりつつあります。世界各国における情報機関の矛先は、政府や企業が保有する先端技術に向けられています」
海外ファンドに対し、株主提案権や議決権の行使などを控えるよう不当な圧力をかけたと指摘される東芝問題について、北村氏は経済安全保障の視点も必要だと語った。
「この問題では株主の権利ばかりが取り上げられていますが、それは一面的な見方でしかありません。東芝は原子力や量子暗号の事業を手掛けており、我が国の安全保障に密接にかかわる企業です。安全保障の観点から東芝が経産省に情報提供し、経産省が適切なアドバイスを与えることは、何ら違法ではありませんし、当然のことだと思います」
昨年「任命拒否問題」で耳目を集めた日本学術会議についても言及した。