ふせんを外して書類に目を通し始めると、送り主からの丁寧な挨拶のあとに、彼自身が何者であるかの紹介が記載されていた。彼はその宗教団体の関係者のようで、ご丁寧に氏名、住所、メールアドレスまで書かれてあった。どうやら、私が書いた男女格差についての記事を読み、連絡をくれたようだ。ここまでは特に問題はない。記事の感想を送ってもらえるとこちらも勉強になるし、様々な角度からの観点は非常に参考になるため、ありがたいのだ。
女性は男性をサポートする役目、という教え
しかしながら、彼もとい、彼らが「指導者」と呼ぶ男性の思想は、男女同権の考えを根本から否定するものだった。彼は、私や昨今の「男女平等」の考え方について「欧米の思想に取り込まれている」としたうえで、「欧米から押し寄せてきている男女平等に関する考え方には、男女の本質を知らないがゆえの、行き過ぎた考え方が混じっています」という文言を続けた。
その上で「これから3回に渡って、人類史上最高の悟りを得ている先生が書かれた資料を送らせていただきます。それらを読み終わったあと、今一度、男女のあり方を、男女が平等であるとはどういうことかを考えてみてください」と書かれてあった。率直な気持ちを包み隠さずに言えば、嫌なディアゴスティーニのようだ、と思った。
彼らの指導者によれば、男性と女性にはもともと「役割」があり、女性は主に男性をサポートする役割を持つのだという。それゆえ、女性が社会で男性と同じように振る舞おうとすることは、本来与えられた聖なる仕事を放棄したということであり、その罪は重い、という。
男性は男性として、女性は女性として尊く、同じ物差しで測ってはならない。男性の魂は責任感を通して磨かれていき、女性の根本とは、この世を調和させようとするエネルギーなのだという。
ここまで読んだ時点で、私はすでに怒りを覚えていた。そしてさらに、指導者は“LGBT”(原文ママ)についても言及しているが、これがひどく差別的なものであった。この記事を読んでいる人を不必要に傷付けたくないので具体的な描写は控えるが、指導者本人が持つ差別的思想を、さももっともらしくさまざまな「神」の名を借りて信者に説いているのだ。
宗教に深く根付く差別的思考
私はここに、差別的思想が固く、深く根付く仕組みを見たように思えた。自分たちが信じ崇めている指導者が強い言葉で否定・排除しようとする存在に対し、信者である彼ら彼女らが拒絶を示さないことはすなわち教えに背くことであり、許されざる行為なのである。