8月22日投開票の横浜市長選では、現職市長の林文子、前国家公安委員長の小此木八郎、元横浜市立大教授の山中竹春、前神奈川県知事の松沢成文、元長野県知事の田中康夫ら9人が名乗りを上げている。最大の争点はIR(統合型リゾート施設)つまりカジノ誘致の是非だ。
現職の林は賛成の立場をとり、彼女以外の主要候補は、反対の意思を明らかにしている。そこに前閣僚の小此木が「取りやめ」という方針を掲げて出馬表明し、菅に反旗を翻す形になったため騒然となっている。
8月10日発売の月刊「文藝春秋」9月号では、ノンフィクションライターの常井健一氏+本誌取材班による選挙戦ルポを10ページにわたり掲載。そのなかで横浜市長選をめぐる最大のキーマンであり、地元の政財界に絶大な影響力を誇る藤木企業会長の藤木幸夫への独占取材を行なった。
「ハマのドン」の異名をもつ齢90の藤木は、長年小此木と菅を支えてきた。だが、ギャンブル依存症への懸念を理由に、1年半ほど前からIR反対の論陣を張り、自民党に痛烈な批判を続ける。そして今回、立憲民主党や共産党が推す山中の応援に回る。
藤木は、6月中旬に小此木から出馬について挨拶の電話を受けたと明かす。
「たしかに電話がかかってきたよ。出馬の報告を受けたから『いいよ、我慢して頑張れ』って。彼は彼の生き方でやってるから、前もって相談なんかしていない。でも悩んだと思うよ。一衆院議員なら『正しいよ』と言えるけど、大臣を辞めたとなると、よっぽどの覚悟が必要。男の進退として見事ですよ」