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2021/08/05

「スケートボードの時間以外は体力温存のために寝る」

 四十住のことを長年見続けているプロスケートボーダーであり、13mindというスケートボードカンパニーを運営する上田豪さんは、小学生だった彼女を初めて見た時に「休憩もせずにひたすら練習している子だな」と思ったそう。

2017年のAJSA全日本アマチュア選手権で優勝した四十住(左から2番目)。彼女の右にいるのが女子ストリート金メダリストの西矢椛で、右端にいるのが銅メダリストの中山楓奈。今見るとなんとも豪華な顔ぶれ ©Yoshio Yoshida

「さくらと技の勝負をした時に、勝つまでずっと勝負を挑んできたんです。さくらは負け続けるんだけど、それでも、もう一回やるって勝負をやめないんです。こっちが疲れてギブアップ。さくらの相手をするには、1人じゃ到底無理。5時間は滑り続けます。とにかく負けず嫌いなんです。毎日何時間も練習してマシーンのように滑り続けるのが、彼女の強みですね」

 その甲斐あって、2017年には、ガールズスケーターの大会「Exposure」では、AM15overで優勝、Vert proで3位入賞を果たした。そして、2018年の日本選手権、アジア大会、世界選手権の3大会を制し、「初代女王」に輝いた。

 しかし2019年に岡本が彗星の如くシーンに現れ、それをひっくり返した。岡本は女子のレベルを超越したエアーと自身の代名詞となった「540」(空中に勢いよく飛び出し1回転半する大技)を武器に無敗街道をひた走り、五輪予選全勝という快挙を成し遂げたことで、一時は金メダル確実とまで言われる存在になっていたのだ。今まで敵なしだった四十住は岡本の存在に苦しむこととなった。

2019年に世界を席巻した岡本碧優のバックサイド540 ©Yoshio Yoshida

 そんな中、コロナによって東京五輪は1年間延期されることとなった。2020年だったら確実に岡本がメダルを取ると言われていたが、この延期が命運を分けたのである。

 延期された1年の間に、四十住はメイクすることができなかった「540」を習得。それもあってか、最後の世界選手権では2年半ぶりに岡本を抜いて優勝を果たした。また地元・和歌山の酒造会社倉庫を活用した国内初の選手専用プライベートパークが作られ、今までの移動にかかるお金も時間も全てスケートボードに捧げることができた。

 その結果、彼女は今回のオリンピックでも540を成功させて、見事金メダルをとったのである。

 テレビは一切見ないからなんの話題にもついていけない。スケートボードの時間以外は体力温存のために寝る。スケートボードで上手くなることしか興味がなかった少女には、いつの間にかチャンピオンになるための道が勝手に出来上がっていたのではないだろうか。

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