2021年初夏。スケートボードの存在が日に日に、世間一般に知れ渡り始めていると感じる。
その火種は間違いなく東京五輪である。オリンピック正式種目として選ばれたスケートボードだが、驚きなのは、メダル圏内に日本人選手が数人いるということである。
オリンピック新種目・スケートボード
昨年あたりからニュース番組では国際大会の結果が報道され、スポーツ番組では選手の特集枠も設けられ、お茶の間で目にする機会が一段と増えた。
それと同時に、街中でのスケートボード行為が迷惑だという報道も増え始めた。国の名勝である山口県の錦帯橋でスケートボードをする若者の姿が報道されたのは記憶に新しいだろう。
公共の場所で滑るスケーターにイラっとした方も多いのではないだろうか。日本に馴染みの少ないスケートボードをあまりよく思わない方は多く、スケボー=悪と思っている人も多い。スケートボードは、オリンピック競技に選ばれた一方で、社会からは嫌われているという今までにないスポーツ(?)なのである。
スケートボードがスポーツとして認識され始めた歴史は浅い。夏と冬の年2回開催される「X-GAMES」などの大会が、アメリカのケーブルテレビに大きく取り上げられるようになった2005年から、徐々にスポーツとしての認識が高まっていった。
スケートボードは1940年代に発祥したと言われているので、これまでの80年あまりの歴史のうち、スポーツとして意識されているのは、たった16年である。日本でのスケートボードの歴史は、それよりもさらに短い。そんな日本からメダル候補が2人も出ているのだから、日本はスケートボード先進国なのか、と思ってしまいそうだが、実際そうではない。
スケートパークから溢れるスケーター
日本において、スポーツとしてのスケートボードは、欧米に比べるとかなり遅れているのが現状だ。
練習する施設の数や質は低く、ストリート(街中)で滑れる場所も少ない。公園や街中で「スケートボード禁止」と書かれた張り紙はよく見るだろう。
スケードボードは滑るときや技をする際に、かなり大きな音をともなう。近隣への騒音問題もあって、スケートパークが作られる場所は限られてしまう。そのため都内においては片手で数えられるくらいの施設数しかない。しかし、スケートボードの競技人口は増えているので、施設で滑れず、溢れてしまう人が出てくる。そうしたスケーターは、住宅街や街中へと練習の場を探し彷徨い始めるのである。
スケートボードの練習は人通りが少なくなる深夜に行うことも多い。夜に仲間と集まって、街中でスケートボードをやっていることもイメージが悪い原因の一つだろう。
つまり、日本のスケートパーク事情というのは、まだまだ後進国であり、施設は、競技人口の1割もカバー出来ていないのだ。しかし、スケートボードは、初期投資が安く、舗装されている道さえあれば、いつでも気軽に出来るので、我々の生活環境にとても近く、スポーツとしては特殊なポジションに位置しているのである。