米『ウォール・ストリート・ジャーナル』によれば、持ち帰り食品などに添えるミニパック入りケチャップの不足がアメリカで深刻化しているという。
コロナ禍を受け、全米で多くの飲食店がテイクアウト専門の業態へと姿を変えた。その結果、料理に添えるケチャップのミニパックの需要が急増して昨年夏頃からその不足が顕著になり始め、卸売価格も13%上昇。今では大手ファーストフードチェーンでも仕入れが難しくなっているのだとか。
アメリカのレストランのテーブルに置かれている調味料で最も消費されるのは、ケチャップである。しかしコロナ禍の中、なぜケチャップのミニパックだけが、全米でパニックを引き起こすほどの需要過多と供給不足を招いたのだろうか。昨春以降にテイクアウト専門店へと衣替えしたアメリカの飲食店は、なにもハンバーガーショップやホットドッグ店ばかりではないはずなのに……。
アメリカ人は揚げ物系には必ずケチャップ
この疑問を、東京で『FATZ’S THE SAN FRANCISCAN(ファッツ・ザ・サンフランシスカン)』を営むオーナーシェフ、ジョナサン・レヴィン氏にぶつけてみた。
アメリカ人の両親の間に日本で生まれ、東京とサンフランシスコを行き来しながら育った彼は、吉祥寺の純アメリカ料理レストラン『FATZ’S~』で、本場と寸分違わないレシピのハンバーガー、サンドイッチ、バーベキューなどを提供している。日米双方の食習慣や飲食店事情を比較しながら、コロナ禍以降のアメリカのケチャップ事情を解き明かしていただくには、うってつけの人物だ。
「コロナ禍以降、アメリカは各地で完全なロックダウンに入り、飲食店のイートイン営業が完全禁止されました。そうなると、もともと対応しているファーストフード店のテイクアウト需要が伸びただけでなく、普段はイートインのみの店も、自店の看板料理を生かしたハンバーガーやサンドイッチのたぐいをテイクアウト用メニューとして新たに作り出し、一斉に販売し始めたんです。アメリカ人になじみがあって多くの注文を期待でき、持ち帰りに向いた料理というと、誰が考えてもそういうものになりますからね」(レヴィン氏)
そしてアメリカ人は、ハンバーガー、サンドイッチ類を注文する際、サイドメニューとしてフレンチフライ(日本で言うフライドポテト)などの揚げ物も一緒にオーダーすることが多い。
「一般的なアメリカ人の感覚だと、そうした揚げ物系は必ず、ケチャップを付けて食べるものなんです」(レヴィン氏)