決勝進出を“ギリギリで”狙うことのリスク
その400m以上の種目においてギリギリの通過を狙うのは、どれだけベテランであっても、世界王者であっても“万が一”が起こる確率を残してしまう。決勝進出ラインが4分10秒と予想するならば、4分8~9秒を出すことを目標とすべきであった。
もし、経験豊富な指導者であれば、そうした指示を出すことができただろう。
それだけではなく、五輪というのが競泳選手にとって世界最高峰の大会であるからこそ、海外選手たちはこぞって本気を出してくることが分かっている。過去の記録を見て予想したとしても、予選から攻めてくる選手も、世界選手権とは比べものにならないほど出てくる。そういうことを加味すれば、決勝進出ラインの予想は4分9秒前後という結論を導き出すことだろう。
その経験が、浦コーチにはなかった。理由はシンプルで、五輪で戦ったことがないからだ。
そうなると、実際に五輪を含めた世界で戦い抜いてきた瀬戸の意見を信じ、その線で作戦を立てていくことになる。それが、最終的に今回の読み間違いという結果につながってしまった。
この失敗を瀬戸陣営はその先につなげていくはず
幸いなのは、この経験を瀬戸だけではなく、浦コーチもともに味わったことだ。彼らは、今後出場する世界大会で、同じミスをすることはないだろう。彼らの競技人生は、まだまだ続く。この先につなげなければ、ただ「五輪で油断して負けた」だけになってしまう。
その後の男子200mバタフライに出場した瀬戸は、準決勝に駒を進めたものの、またも決勝進出を逃してしまった。
気持ちだけではなく、体調、泳ぎにも微妙なズレが生じていることは確かだ。残すは200m個人メドレーのみ。ライバルである萩野とともに出場するこの種目で、もう一度輝きを取り戻すことができるか。その泳ぎに注目したい。