開会式直前の関係者“辞任ドミノ”に始まり、メダル候補のまさかの敗戦やダークホースによる下馬評を覆しての戴冠劇、コロナ禍で開催され、明暗含めて多くの話題を呼んだ東京オリンピック。ついにその長い戦いも閉幕しました。そこで、オリンピック期間中(7月23日~8月8日)の掲載記事の中から、文春オンラインで反響の大きかった記事を再公開します。(初公開日 2021年7月28日)。

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 東京五輪から新種目に加わったサーフィン。日本勢では、男子は五十嵐カノア(23)が銀メダル、女子は都筑有夢路(20)が銅メダルと下馬評を覆す大健闘をみせた。
  
「今回、出場した選手たちはサーフィン界のトップオブトップ。ハワイ出身のジョン・ジョン・フローレンスや、ブラジル出身のガブリエル・メディナ、イタロ・フェレイラなど、サーフィン大国の英雄たちが集まっていて、五十嵐や都筑にとっては“格上”ばかりだでした。そのなかでメダルを獲得した。日本のサーファーにとっては予想もしていなかった“胸アツ”な展開でした。

 五十嵐が決勝で敗れたあと、ビーチに膝をついて悔しがっていましたが、彼はこんな強豪たちとの闘いに、ここまで本気で立ち向かっていたんだということが伝わってきた。胸を打たれましたよ」(日本サーフィン連盟関係者)

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台風が迫りくるなか、あえて1日繰り上げての実施

 しかし最終ラウンドが行われた27日は、台風8号の影響で会場となった千葉・一宮の釣ヶ崎海岸は大荒れ。もともと決勝と3位決定戦は28日に予定していたが、台風が迫りくるなかあえて1日繰り上げての実施となった。地元のサーファーが明かす。

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「台風が接近してくるときには波が大きくなるのですが、強風のせいで海面はグチャグチャ。むしろ台風が過ぎた直後は、サーフィンがしやすい、いい波が立つんです。なので仲間とは『台風が過ぎ去った後に最終ラウンドすることになるだろうね』『すげーいい波でオリンピックが見られるとかラッキー』なんて予想していたんですよ。
  
 それが、急遽前倒しで台風が迫ってくるなか決勝までやることになった。『誰だよ、こんなこと決めた奴!』なんて怒っているサーファーもいました。もしかしてサーフィン知らないおっさんが決めたのかなって」(地元サーファー)

『チャンスがなかったことが悔しい』

 この決定により、選手たちは荒れる波と格闘することになった。波に高さがあるため大技に挑戦しやすくなる一方、波の発生は予測不可能でタイミングに恵まれないといい波を掴めないという状況に陥った。
  
「五十嵐は、準決勝で『エアリアル』の大技を決めるなどして格上相手に大逆転したが、決勝では波に乗り切れず大技に挑戦する機会に恵まれませんでした。競技後のインタビューで、周囲の人への感謝の気持ちを話すなどしっかりと対応しましたが、決勝について『チャンスがなかったことが悔しい』と不完全燃焼に終わったことを悔やんでいた。確かに準決勝と同じ点数をとれていれば優勝でしたからね。相当悔しかったんだと思います」(大手紙社会部記者)