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ロシア革命100年 声優・上坂すみれ「ソ連大好き」インタビュー#3 私のフルシチョフ

フルシチョフが好きな理由は「あの叩き上げ感ですね」

――先ほど、政治家列伝を読むのもお好きだと伺いました。上坂さんは中でも、フルシチョフがお好きなんだとか。お持ちしたマトリョーシカにかろうじてフルシチョフが入ってたんですけど。

上坂 あはは。フルシチョフ、ちっちゃい。このマトリョーシカ、レーニンとスターリンが省略されている、珍しいタイプですね。ああ……、このフルシチョフは頭が良さそうに描かれていますね。

フルシチョフを手に

――フルシチョフのどういうところがお好きなんですか?

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上坂 あの叩き上げ感ですね。21世紀の先進国ではなかなかトップになれない感じがするんですよね。スターリン亡き後、スターリン批判をした人物として歴史に名を残してるわけですが、独裁国家ならではの第一書記、トップという感じがします。アネクドート読んでいると、フルシチョフはおバカキャラ系になっていて、いろいろ風刺されているところも面白いです。その次に書記長になったブレジネフはロシア時代になってから人気になっていますね。

右下からフルシチョフ、ブレジネフ、ゴルバチョフ。背後に控えるのはプーチン

――どうしてなんですか?

上坂 一見、停滞していたかに見えるブレジネフ時代なんですが、すごく安定していた時代でもあるんです。たとえば、ゴルバチョフ時代になると、ペレストロイカの後とか、経済が大混乱して、スーパーに長い行列ができて……ということがありました。でも、ブレジネフ時代は、なんかゆるーく暮らしていけたよねっていう理由で、再評価というのかな、人気が出てきているそうなんです。書記長在職期間も16年と長いですよね。……あれ? このマトリョーシカ、ブレジネフの後のアンドロポフとチェルネンコがいない! なかったことにされてます! 粛清(笑)?

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――一気にゴルバチョフに飛んじゃってるんですよ。

上坂 でも日本の総理大臣のマトリョーシカを作るとすると、フルシチョフ時代から数えたとしても30体くらい必要ですよね。ソ連・ロシアの場合は、フルシチョフからプーチンまで8体で済む。そう考えると日本で指導者こけしとか作りにくいですね、あまりにも多くて。

 

プーチンの実力主義は曹操的な感じがします

――上坂さんはプーチンをどのようにご覧になっていますか?

上坂 いろいろなプーチン論があるので、どのプーチン論を採用すべきかは難しいところですね。ただ、私の実感としては、叩き上げかつエリートで、しかも民衆へのプロパガンダも上手だという点は指導者としてすごいなと思います。だって、カレンダー出してるんですよ。本人が出してるのか知らないですけど(笑)。

――虎と一緒のカレンダーですね。

上坂 虎絞めたり、裸で川渡ったり。私は強い指導者ですということを、たとえ字が読めない国民にもイメージで鮮烈に伝えている。対外的には21世紀的な強めの外交もなさっている。あまりプーチン万歳をするわけにもいかないですけれども、これだけ長くロシアを治めているということは、民がこういう指導者を求め続けているということに他ならないんでしょうね。やはりロシアはツァーリ(皇帝)と民衆の国です。

 

――強さが求められている、ということなのでしょうか。

上坂 中国でもそうだと思いますけど、ああいう大きい国って、必然的に強い人じゃないと治められないんだと思います。私は、いま三国志が好きなんですけど、確かに曹操ぐらいぶっ飛んでいないと大国統治ってできないんじゃないかな。劉備みたいに、飲み会大好き、人の輪を大事にして、グループを大事にしてってやっていると、曹操の「唯才是挙」、ただ才のみこれを挙げよ、という人材登用ができない。プーチンはまさに「おそロシア」を体現しているような人だと思いますが、その実力主義は曹操的な感じがします。