放送を見て流した涙
また、真田さん同様、JAC創設来のメンバーである大葉健二さんが主役を務めるSF特撮ドラマ『宇宙刑事ギャバン』(’82年)にも千葉さんはゲスト出演。
千葉さんは大葉さん演じる主人公・ギャバンの行方不明の父・ボイサー役。宇宙を揺るがす超兵器の秘密を、自分の命と引き換えに守り抜いた。そのボイサーと息子・ギャバンが十数年ぶりに悲願の再会を果たしたのも束の間、ボイサーが静かに息を引き取る第43話「再会」は涙なしには観られない。
「大葉君主演ということで、僕が父親役を買って出て。スケジュールの都合で最後にちょこっと出ただけだったけど、忘れられない撮影になりましたね」と千葉さん。千葉さんは大葉さんへのはなむけにノーギャラで出演した。
「前の晩からずっと“僕は大葉君の実の父親なんだ、父親なんだ”と自分に言い聞かせて撮影に臨みました。放送で大葉君の涙を見たら、“初めて会ったときはまだ高校生だった彼が、よくぞここまで成長してくれて……”って彼とのいろんな想い出が蘇ってきてね。僕も自然と涙が出ましたよ」
その大葉さんとは後年、映画『キル・ビル』でも共演を果たす。タランティーノ監督が大葉さんも出演していた『影の軍団』シリーズ(’80’~85年)のファンでもあったからだ。千葉さんは“頼れるかっこいい兄貴”であり、後年は“ヒーローたちの優しい父親”でもあった。
かっこよくて強い、頼れる存在だった俳優・千葉真一
今年5月に亡くなった小林亜星さんが、頑固で人情に厚い、古きよき日本の父親像の見本だったなら、千葉さんは、子供達誰もが憧れる、かっこよくて強い、頼れる父親像の象徴だったことだろう。個人的にも、仕事でお世話になった志村けんさんに続いて千葉さんまでもが新型コロナウイルスに……やりきれないことこの上ない。
千葉さん、たくさんの夢と冒険をありがとうございました。