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停電、火事、トイレ崩壊……生放送中の大事故でもコントを続けた志村けんさんの“人間力”

2021/04/04

genre : エンタメ, 芸能

 志村けんさんが、昨年3月29日に亡くなって早1年。志村さんが所属していたザ・ドリフターズの先輩にして盟友・仲本工事さんが命日に「一年早いものですね。でもまだ、志村がそばにいるような気がします」とTweetしていたが、それは志村さんを愛したファン共通の想いでもある。

 その溝や心の隙間が埋まるはずもないとは思ったが、予想どおり埋まるはずもなく、今も志村さんがいた心の場所にはポッカリと大きな穴が空いたままだ。なぜなら“志村けん”の隙間を埋められるのは志村けんその人しかいないから。1年経ってその真実を改めて突き付けられた思いだ。ならば、“志村けん伝説”の生き証人として、その偉業を後世に伝え続けていくしかない……と思い立ち、本稿を書かせていただく次第。

©文藝春秋

 もちろん晩年に近い『志村軒』(’10年〜’12年)や『志村でナイト』(’18年〜’20年)、第2の黄金期ともいうべき『志村けんのだいじょうぶだぁ』(’87年〜’93年)や『バカ殿様』シリーズ(’86年〜’20年)も大好きだったが、昭和42年生まれ的にはやはり『8時だョ! 全員集合』(’69~’85年/志村さんの登場は’73年~)時代の志村さんが一番思い出深い。決してそれが“ベスト”と主張しているわけでなく、世代的に個人的“思い入れ”が熱いのが『全員集合』時代という話で、リアルタイム世代として証言しておきたいということなのでどうか誤解なきよう。それぞれがそれぞれの時代の志村さんを語っていただければ……と思う。

 そして今回は、志村さん一流の“芸”ではなく、生放送ならではのハプニングとそれを乗り切った“プロ魂”をプレイバックしたいと思う。

停電から始まった『8時だョ! 全員集合』伝説の放送回

『全員集合』16年の歴史で最大のハプニングといえば、やはり“停電”に尽きるだろう。番組開始とほぼ同時に会場(入間市市民会館)が停電したのだ。1984年6月16日放送分のこと。いつもどおり土曜の夜8時に、テレビの前にいた我々視聴者は、暗闇の中のざわめきに“8時だョ! 全員集合”のタイトルロゴが躍る、いつもと違う光景に目を疑った。

TBS テレビ放送50周年記念盤 8時だョ! 全員集合 2005 DVD-BOX(販売元:ポニーキャニオン)。『おたのしみ!「ハプニング映像」』と題して生放送中に起きたあっと驚くハプニングの数々の中から厳選した映像を各巻に収録。

 いつものようにリーダーの長さんこといかりや長介さんが「8時だョ!」と叫び、会場の階段にいる加トちゃんや志村さんはじめ残りのドリフ・メンバーが「全員集合!!」と続けて、元気よくステージ上に疾走するオープニングを期待していた我々視聴者は瞬時に異常事態が起きている事実を理解した。以降しばし照明は点いたり消えたり。