テレビバラエティ史に残る衝撃映像のひとつと言えば、2014年放送の『鶴瓶の家族に乾杯』(NHK)に加藤茶が出演した回だろう。
ロケ現場に現れた加藤は明らかに生気がなかった。目線もうつろで、ろれつが回らず、はっきりと言葉を発することすらできず、共演する笑福亭鶴瓶も心配していた。日本中の視聴者がこのときほど心から「だめだこりゃ」と思ったことはなかった。
ところが、その後、加藤茶は順調に快復していった。のちに本人が語ったところによると、番組出演時に調子が悪かったのは、当時飲んでいた薬が合わなかったためだという。
『志村けんのだいじょうぶだぁスペシャル』での“全員集合”
加藤は少しずつ元気を取り戻し、2017年3月15日放送の『志村けんのだいじょうぶだぁスペシャル』(フジテレビ系)では久々にコントを披露するまでになった。私が「神回」として紹介したいのはこの番組だ。
そこには2004年に亡くなったいかりや長介を除くザ・ドリフターズのメンバー全員が集結していた。まずはトークコーナー。4人で集まるのは久しぶりだと語り、「いつ以来だったかな」という話になって、仲本工事が「長さんの棺桶かついだとき以来だ」と言った。いや、事実なんだろうけど、言い方!
往年のドリフのコントでは、いかりやが教師や母親などの絶対的な権力者として振る舞い、ほかのメンバーが彼に逆らって暴れ回るというのがお決まりの形になっていた。その関係性は舞台裏でも似たようなものだったというのは有名な話だ。いかりやがリーダーシップを発揮してネタ作りなどのすべてを取り仕切っていて、ほかのメンバーはそれに不満を持ちながらもなかなか逆らえなかった。
「俺、初めて長さんに勝ったよ」
この番組で志村けんがとんでもない話を切り出した。いかりやが亡くなったとき、高木ブーが「俺、初めて長さんに勝ったよ」と喜んだというのだ。高木もそれを否定しない。
いかりやは大の負けず嫌いで、ゴルフでも射撃でも、高木に一度でも負けるとそれが悔しくて二度とやらなくなるのだという。だから、いかりやを先に看取ったのは高木にとっては貴重な初めての全面勝利だったというわけだ。なんという話だろう。エピソードのクセがすごい。